昼寝は身体にとって悪いか:それとも、からだに良いか? (RTE-News, January 26, 2021)
「添い寝」、「独り寝」、「雑魚寝」は、まだましだ。ヤケのやん八の「ふて寝」、老獪(ろうかい)な詐欺師・悪党の「タヌキ寝」ともなると、その眠りも汚れる。
一方、古いことわざに「昼寝をすれば鈍(どん)になる」がある。どうせ、老獪な地主か権力者が、その使用人や小作人の昼寝を嫌って、一般庶民に信じ込ませたことだろうが、「昼寝をする人間は怠け者」と決めつけ、「昼寝をすれば、身も心も鈍(なまくら)になる」と戒めた。
しかし、「General Psychiatry」の電子版に発表された研究 (被験者は健康な60歳以上)によれば、「昼寝(afternoon nap)」を習慣にしていると、
・mental agility:頭が冴え
・locational awareness:位置認識
・verbal fluency:言語流暢性
・working memory:作業記憶
が高まるという。
つまり、昼食後、眠気を覚えたときには、さっさと数十分間、午睡をとる。これによって、次の効果も期待できるというのだ。
・reducing sleepiness:眠気がとれる
・memory consolidation:メモリ統合の改善
・preparation for subsequent learning:目が覚めた後の学習の準備
・executive functioning enhancement:実行機能の強化
・boost to emotional stability:情緒安定性が増す
ただし、この主張には、裏付けとなる証拠(evidence)が示されているわけではない。また、残念ながら、昼寝が認知症、認知機能低下に効果があるのかは不明。
なお、BMJに発表された研究によると、昼寝を繰り返す人には、血液中の「triglyceride (中性脂肪)」が高い。これは「心血管疾患(cardiovascular desease)」との関連性が指摘されている脂肪だ。
しかし、California大学(2019)及びローザンヌ大学病院Ms Nadine Häuslerらの研究グループ(2019)の研究結果には驚く。いずれも、「週に1,2度昼寝をすると、心血管疾患の発症リスクが低下する」と報告しているのだ。
おわりに:脳神経の働きや、睡眠に関しては、まだ十分に解明されていないことが多い。古いことわざにも、また幾多の研究論文にも、なにがしかの真理があるのかも知れないが、得てして、ほんの一面を見ているのに過ぎないものだ。全てを鵜呑みにしてはならない。
(写真は添付のRTE Newsから引用)