最近の若ものの間で流行(はや)っているのは、化け物のような大型のボックスカー。たかが 10 −20分の通勤、ショッピングに、貨物トラックと同サイズの大型マイカーを走らせる。運転席から周囲に目が十分に届かない、あの大きさのクルマでは、近づいた子どもや老人に気づくのは無理だろう。そして、駐車場では、一台のパーキング・スペースからはみ出して駐車している。
そんなモンスターとは対照的な「transport vehicle」が今、話題になっている。「electric scooter (電動キックボード)」だ。重量は軽量の自転車と同じくらいで、走行スピードは最大 20 −25km/hと自転車なみだ。
日本ではローラー・スケートと同様に「遊具」扱い。道路交通法第76条第 4項の 3号において「交通の頻繁な道路上では使用禁止」とされ、違反者には 5万円以下の罰金が課される。
一方、Irelandでは法律上「mechanically propelled vehicle (機械力推進車両)」に分類され、
・roadworthy:道路走行
・registered:登録
・taxed:税負担
・insured:保険加入
の義務が発生する。
ただし、実際には「electric scooter」については「tax category (税項目)」が存在しないし、その事故の保証に関して保険会社に問い合わせても、ほとんど笑われるだけだという。
さて、気になるのは、その安全性。しかし、データが不足しているため、現段階で自転車の事故に比較することは、不可能とか。
はっきりしているのは、その移動コストが格段に低いことだ。ガソリン車、ハイブリッド車、ディーゼル車の移動コストが、100km当たり €1.4 -1.9、電気自動車の 70centに対して、「電動キックボード」は、たったの 9cent。ガソリン車の約 3%で移動が可能だ。近距離の移動手段としては、どんな公共輸送機関よりもはるかに安く、便利だ。(加えて、駐車料金、自動車保険料、自動車税、定期点検・整備費用は、いっさい不要。)
さらに、この移動手段は「environmental credentials (環境保全型の特質)」を備えている。世界のエネルギー生産が、再生可能エネルギー(太陽光発電、風力発電など)に軸足を移しつつあるなかで、今後の100年を見据えると、「electric scooter」は
・温室効果ガスCO2の大幅な削減
・道路の交通混雑の緩和
・大気汚染の改善
を図る上で、重要な役割を果たしてくれることが期待できる。
なお、自転車 (bicycle)も、環境に優しい交通手段ではある。しかし、Irelandの「2016年国勢調査」によると、「cycling commuters (サイクリング通勤者)」の約 2/3を、男性が占める。「通勤距離が遠い」、あるいは、とくに女性の場合、「体力が続かない」、「オフィス・レデイに適した洋服で自転車に乗れない」などの理由から、サイクリングが敬遠されることも少なくないのだ。
おわりに:クルマが急速に普及したのは戦後だ。土ぼこりの舞う道路は、荷馬車、リヤカー、運搬用自転車、歩行者にあふれ、ごった返していた。その時代のトラックは、歩行者にとって危険で、迷惑この上ない運搬・輸送手段であった。とくに雨天のときは、水たまりの泥を跳ね飛ばし、最悪だった。
確かに「電動キックボード」も、歩行者にとっては邪魔で、危険なものになりそうだ。しかし、「戦後のトラック」よりは、増しだと思う。ルールをきちんとつくり、守ることさえできれば.......。
(写真は添付のRTE Newsから引用)