海藻の需要が世界で急増:大型の養殖プラントが脚光を浴びる! (BBC-Business, August 27, 2020)
かって、北米・ヨーロッパでは、ヒジキやワカメなどの海藻が食卓に上がることはほとんどなかった。ところが、日本食、健康食ブームが背景にあってか、このところ、その需要が急増。「The UN's Food and Agricultural Organization (国連食糧・農業機構)」の報告書によると、2005 -2015年の10年間で、世界の海藻の生産量が 2倍に膨れ上がり、今では年間約3,000万トンを超える。
海藻 (seaweed)は、太陽の光エネルギーを利用し、海水中の養分とCO2を取り込む。まさに、気候変動・CO2削減対策には願ってもない救世主だ。
水揚げされた海藻は、現在、主に食品加工に回されているが、その他の用途として
・歯磨き
・化粧品
・医薬品
・ペット・フード
・繊維・プラスチックの代替品
・食品添加物 (親水コロイド)
・生分解性包装材
・ウォーター・カプセル
・ストロー
さらに、将来、以下の用途も考えられている。
・魚のエサ
・肥料
・バイオマス燃料
このため、目下、注目を浴びているのが、「海藻の養殖 (seaweed farming) 」。BBCは、代表的な 2つの養殖事業を紹介する。
その一つが、北大西洋上にあって、アイスランドとノルウェーとの間に浮かぶデンマーク領「Faroe Islands (フェロー諸島)」の fjord (フィヨルド) で、養殖事業を進める「Ocean Rainforest」。他の一つは、ポルトガルの「AlgaPlus」の事業例。
1.Faroe Islands(フェロー諸島)
北大西洋の荒波の影響を避けるため、水面下約10mに張ったネットで試験的に海藻を育てている。年間生産量は約200トン。今のところ、思うような採算はとれていない。事業の課題は、「labour cost (労賃)」が高いこと。今後、作業の機械化、ロボット化で省力を目指す。今年中に、養殖プラントの規模を 2倍に拡大する予定だ。
養殖リグで水揚げした海藻は、すぐに、フェロー諸島の小さな村「Kaldback (カルドバック)」に運び込み、ここで一旦水洗いした後、一部を食品加工場に送り、残りの海藻は、この村の設備で発酵させて、家畜のエサとして販売している。
2.Protugal:Land-based seaweed cultivation
ポルトガルのベンチャー企業「AlgaPlus」が海藻を養殖するのは、巨大な水槽を陸上に並べた施設。海上の養殖プラントに比べて、管理が容易で、一年を通して生産が可能。養殖に必要な大量の水は「coastal lagoon (沿岸ラグーン)」から引き込み、一旦、魚の養殖タンクで使用。そこからポンプで海藻養殖プラントに水を流送させている。こうすることで、海藻プラントでは養分に富んだ水が利用でき、海藻の生長促進に役立つ。少量ながら品質の高い海藻の生産を目指す。
ただし、この操業システムの主たる障害 (bottleneck)となっているのは、水の汲み上げやパイプ流送、水槽の曝気(aeratio)などに必要なエネルギーコストを、どのように下げるかだ。
そうは言っても、海藻の需要は今後も上昇すると考えられ、いずれ、高い収益が上がるものと、経営者は期待している。
おわりに:コンブ、ワカメの養殖と一口で言っても、その養殖技術は深い。誰にでもすぐにできるものではない。また、自然のバランスを崩さずに、特定の海藻だけを海洋に大量に繁殖させることも、困難を極めるに違いない。
(写真は添付のBBC Newsから引用)