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古代ローマ帝国の崩壊:火山噴火が原因だって? (RTE-News, Aug 4, 2020)

La mort de Cèsar (The Death of Julius Caesar) by Vincenzo Camuccini (1806). Photo: Wikipedia/Creative Commons

 灼熱の太陽が突然黒くなって、辺りが急に冷気に包まれる。また、夕闇の迫る西の空に、一条の光を走らせる流れ星。いずれも、科学的に説明できる自然現象だ。

 しかし、この皆既日食、流れ星が観測されたからと言って、それが、病気の蔓延、戦争、国の崩壊を招く前兆、と騒ぎ立てるのは、余りにも短絡的だ。原因と結果は、それほど単純ではない。

 

 イタリア「Sicily (シシリー島)」の「Mount Etna (エトナ山)」が、BC 44年に噴火した。さらにその翌年の BC 43年、アラスカのアリューシャン列島の「Okmok Volcano (オクモック火山)」が大噴火を起こし、大気中には大量のエアロゾル粒子、粉塵・火山灰が放出された。それは、経験したことがないほど、世界中の気温を下げ、気候を狂わせた。

 コンピュータ・シミュレーションの解析によると、地中海沿岸とアフリカ北部の気温は、平年に比べて 0.7℃ -7.4℃も下がった。この異常気象によって、地中海一帯は、夏から秋にかけて雨が降り続き、逆に、アフリカ北部は干ばつに見まわれて、ナイル川の氾濫さえ途絶えた。すなわち、古代ローマ帝国もエジプトのクレオパトラ王朝も、壊滅的な農業被害を受けたのだ。

 

 くしくも、エトナ山が噴火した BC 44年。その 3月15日、Julius Caesar (ジュリアス・シーザー)が暗殺された。シーザーの死後、古代ローマ帝国は、奸計、謀略、謀反、裏切りの続く内戦と、血を血で洗う残虐な殺戮を繰り返す。ようやく、古代ローマが落ち着きを取り戻したのは、BC27年、Augustusが初代皇帝に就任してからだ。

 

 ところが、Nevada大学「The Desert Reseach Institute (砂漠研究所DRI)」の Dr Joseph R Mconnellらの研究チームは、『シーザーの死後に起こった火山の大噴火が古代ローマ帝国、エジプト王朝の滅亡を招いた』とする論文を「RNAS (米国科学アカデミー紀要)に発表した。

 

 Newcastle大学の Dr Guy Middletonは、この説に疑問を投げつける。

 確かに、BC44、43年に火山噴火があったことは、科学的に証明できるし、納得できる。しかし、その火山噴火のせいで食糧難に陥ったからと言っても、それが、古代ローマ帝国、エジプト王朝の崩壊につながったとする証拠にはならない。

 

おわりに:砂漠の中の小さな町が、干ばつにあって砂に埋もれるとはワケが違う。古代ローマ帝国、エジプト王朝の崩壊の原因を短絡的に捉えるのは危険だ。人間の欲望・争いと時代の変化が入り混じる中で、それはまるでシロアリに食い尽くされる柱のように、次第に脆くなっていったと考えるのが自然だ。

 何ごとも、創生して繁栄するが、やがて終焉を迎え、新たな再生につながる。宇宙の法則・摂理に従っただけかも知れない。

   (写真は添付のRTE Newsから引用)

www.rte.ie