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疲れがとれない、眠れない、全身が痛い病気「ME」:治療法があるか? (BBC-Health, December 17, 2018)

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 たとえ、五体満足に生まれても、健康で幸せに生きるためには、さまざまな困難や障害を乗り越える必要がある。怪我・病気。それは、フラフラ歩き続ける旅人を、まるで大雪原のクレパスのように、人生の暗い裂け目に呑み込もうと待ち受ける。
 
 なお、病気については、原因が分かれば予防策の立てようもあるが、医学が進んだ現代にあっても、未だ原因も分からず、したがって確たる治療法もないものが少なくない。医療には、慢心・うぬぼれは禁物なのだ。「Chronic Fatigue Syndrome (慢性疲労症候群 CFS)」あるいは「Myalgic Encephalomyelitis (筋痛性脳脊髄炎 ME)」と呼ばれる病気も、その1つ。
 患者数はUKで約25万人、日本でも推定10万人が、この原因不明の病気に苦しめられている。症状の特徴は、とにかく、「体の疲れがとれない」。その上、夜眠れず、筋肉・関節に痛みを感じる。現段階で、この病気の治療法は存在しない。NHSは暫定的な措置として「graded exercise therapy (段階的運動療法Get)」を推奨するが、その効果については、専門家の間で意見が分かれている。

 ところが、London大学「King's College London」の Dr Alice Russellらの研究グループは、「慢性C型肝炎 (chronic hepatitis C infection)」に罹患した患者55名に対して、「インターフェロンα (interferon alpha)」を皮下投与した結果、18名が免疫システムの異様な抗原抗体反応を起こして、極端な疲労感など、CFSに特有の症状を示した。
 このとき「immune markers (免疫マーカー)」として知られる血液中の「Interleukin -10 (インターロイキン IL10)」、「Interleukin -6 (インターロイキン IL-6)」のレベルが急増した。

 その後、インターフェロンの皮下注射を中止すると、この IL-10、IL6のレベルも正常値に戻り、CFSの症状も消えたという。

 インターフェロンは、免疫システムを高めるタンパク質。この薬剤が一部の人に対して過剰な免疫反応を引き起こさせたと考えられる。したがって、難病 CFSは、免疫システムの過剰反応が原因だったことになる。
 Camine Pariante教授によると、この発見は、道を見失っ旅人が目にした、「a light of fog (霧の中の一条の光)」。これで、CFSが的確に診断できるようになり、今後の治療法の開発につながるはずと期待する。

 しかし、なぜ、特定の人だけが、過剰な免疫反応を示すのかについては依然、不明。それは遺伝子、それとも幼少期の感染症が原因なのか。今後の研究が待たれる。
 なお、Dr Russellらの研究結果の詳細は、医学雑誌「psychoneuroendocrinology (精神神経内分泌学)」に発表された。

謝辞:この一文をまとめるに当たって、以下の優れた「The Guardian」の記事も参照した。記して謝意を表したい。

・The Guardian: December 17, 2018
[ Chronic fatigue syndrome 'could be triggered by overactive immune system'

 これにて、2018年のトピックス・ガイドは終了します。読者 (regular readers)のみなさま、どうぞ、良いお年をお迎えください (Have a nice New Year's holiday!)。

                   (写真は添付のBBC Newsから引用)

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