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独立めざすスコットランドの苦悩:母なるゲール語が話せない! (BBC-News, July 2, 2020)

Isle of Tiree

 Scottish(スコットランド人)の悲願は、なんと言ってもEnglandからの独立だ。1707年、見方の裏切りと敵の謀略に破れて、Englandに併合された歴史がある。

 その昔、「Scot」とは「wanderer (さすらい人)」を指した。かって、住民の多くが、Irelandの住民と同じケルト系の言語「Gaelic (ゲール語)」を話した。Irelandから多くのケルト系民族が、「North Channel (ノース海峡)」を渡って、Britain島とその西側に浮かぶ大小900を超える島々に移り住んだと考えられている。

 したがって、北欧ヴァイキング (海賊船)がヨーロッパ中を荒らし回った時代、「Scotland」と言えば、Irelandを意味した。

 Scotlandが Englandに併合されると、征服者によって、しばらくの間は、バグパイプの演奏が禁じられ、ゲール語が禁じられ、小学校ではゲール語に代わって英語の教育が進められた。これが災いして、Scotland Gaelic (スコットランドゲール語)は急速に減退した。

Gaelic words

 しかし、考えてみると、それは怖いことだ。いくら、仕事上あるいは商業上、英語が必要と言っても、母国語を忘れてしまっては、「identity (自己の拠りどころ)」を失う。言語 (language)は単なる記録やコミュニケーションの手段ではない。それは、民族の文化、歴史、思想、知恵、魂(たましい)であり、民族の団結を支える絆(きずな)でもある。

 その「Scot (スコットランド人)」は、1,800年以上にわたって、古代ローマ人、北欧バイキング、ノルウェー人、アングロ・サクソン人に攻められては略奪され、反旗を翻(ひるがえ)すたびに、なぶり殺しにあった。それでも、強風の吹きすさぶ、樹木がほとんど育たない、さいはての北の島々で、「Scot」は、なんとか生き延びた。

 「The University of the Highlands and Islands(UHI大学)」のConchúr Ó Giollagáin(クルホール・オゥ・ギオラゲン)教授らは、「The Language Science Institute (言語科学研究所)」、ゲール語研究ネットワーク「Soillse (ソイルス)」と合同で、「Hebrides (ヘブリディーズ諸島)」、「Skye (スカイ島)」、「Tiree (タイリー島)」の島々に暮らす「Gaelic communities (ゲール語コミュニティ) 」の実態を調査した。

 それをまとめたのが、次の一冊だ。

 

・The Gaelic Crisis in the Vernacular Community: A comprehensive  sociolinguistic survey of Scottish Gaelic.

[ スコットランド固有コミュニティにおけるゲール語の危機:スコットランドゲール語に関する包括的な社会言語学調査]

 

 Giollagáin (ギオラゲン)教授らの調査結果によると、「Gaelic venacular community (ゲール語固有コミュニティ)」でゲール語をまともに話せる人は約11,000人。それも大半は50歳以上の高齢者に限られていた。

 このままでは、いくら学校の科目に「Scitish Gaelic (スコットランドゲール語)」を取り入れて言語教育しても、形だけに終わってしまい、若ものにゲール語が根付くことはなく、衰退の一途をたどるだけだ。

 Scotland自治政府は、これまでの形式的なゲール語教育・保護策を改める必要がある。もっと、コミュニティの実情に即した政策(community-based efforts)に取り組んで、コミュニティの住民が日常的にゲール語を読み、書き、話す環境を整えるべきであると、Giollagáin教授は訴える。

         (写真は添付のBBC Newsから引用)

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