思春期:悩みがいっぱいで、夜なんか眠れない! (BBC-News, January 30, 2020)
悪魔や億万長者にも悩みがあるとすれば、どんな悩みだろう。
ところで、Goethe (ゲーテ)が「Die Leiden des jungen Werthers (若きヴェルテルの悩み)」を出版したのは1774年。それから246年が経った。当然のことながら、若い人の悩みもずいぶんと変わった。恋の悩みなどは、とっくに「古臭いこと」と片付けられる世の中だ。
今は、ネット上にありとあらゆる情報が溢れ、それが思春期の若ものに、まるで津波のように襲いかかる。性ホルモンの影響を受けて心が不安定となった若もの (とくに女の子)にとっては、どの情報も、心がえぐられたり、気に掛かることばかりで、不安 (anxiety)、イライラ(nervousness) がつのる。
さて、Glasgow大学の Dr Jo Inchleyらの研究グループは、Scotland在住の子ども (11、13、15歳) の5,286人を対象にした生活実態調査を実施し、その結果を「The 2018 Health Behaviour in School-aged Children」にまとめた。
その報告書によると、思春期の若ものは電子デバイスやソーシャルメディアに振り回され、およそ若ものの 1/3は「sleep problems (睡眠障害)」に陥り、「気分の落ち込み (low mood)や「うつ (depression)」の発症リスクに曝されていることが浮き彫りになった。
加えて、思春期の若ものには
・学業 (試験)
・交友・家族関係
・進学、将来のこと
・容貌・スタイル
などの悩みが重くのしかかるため、余計に不安・イライラが増すことになるという。
なお、調査結果には、家庭の貧富の差が大きく影響していることも明らかにされた。富裕層の住む地域の若ものは、健康的な食生活をし、十分な睡眠時間をとっていたのだ。ちなみに、調査対象者全員に、「野菜、フルーツを毎日食べているか」と尋ねたところ、「Yes」と回答した若ものの割合は、わずか35 - 36%であった。
おわりに:ゲーテの詩を口ずさみ、グリム童話に耳を傾けつつ、ベートーベンの曲に酔いしれて、カント哲学を論じたドイツ人。そのドイツ人が、第二次大戦では無抵抗の人間を、まるで虫けらでも踏み潰すかのように、大量殺戮した。その事実は、今もって不可解だ。ゲーテ、グリムにベートーベン、カント。その文学・芸術・思想は、なんら人間の「徳」・「知性」を高めることに役立たなかったのだ。
手元には、学生時代、少し背伸びして購入した次の一冊がむなしく残る。
・Goethe, 星野慎一編著:Die Leiden des jungen Werthers (独文) (若きヴェルテルの悩み)、第三書房、1970
(写真は添付のBBC Newsから引用)