ガン腫瘍は正常な細胞が壊れた姿だ。しかし、ガン (cancers)は瞬時に出現するわけではない。正常な細胞が何らかの原因で「multiple mutation (多重突然変異)」を起こし、徐々にガン腫瘍に変わってゆく。
乳ガンの中でも、「hormone-receptor positive breast cancers (ホルモン受容体陽性乳ガン)」の腫瘍細胞は、女性ホルモン「estrogen (エストロゲン)」の受容体を持っていて、エストロゲンと結合すると、ガン細胞は急速に増殖する悪性ガンだ。
しがって、このタイプの乳ガンが見つかると、医者は外科手術による「mastectomy (乳房切除)」を勧めることが多かった。
UKでは、2017年から、閉経後の女性で、とくに遺伝子的な要因などが災いして乳ガンの発症リスクの高い人に、抗ガン剤「Anastrozole (アナストロゾール)」の服用を勧めてきた。しかし、肝心の医者自身が、この抗ガン剤の「log-term benefits (長期的な薬効)」に疑念をもっていること、薬の副作用として知られる「stiff joints (関節のこわばり)」、「hot flushes (体のほてり)」、「vaginal dryness」を恐れて、この抗ガン剤の普及は滞(とどこお)っていた。
また、抗ガン剤「Tarmoxifen (タモキシフェン)」が使用されることもあることはある。この抗ガン剤は、ガン細胞がエストロゲン受容体に結合する前に、積極的にその受容体に結びついて、エストロゲン自体の結合を妨げる働きがある。しかし、この薬には、閉経後の女性に適用できないという難点があった。
そこで、「Queen Marry University」の Jack Cuzick教授らの研究グループは、抗ガン剤「Anastrozole (アナストロゾール)」の乳ガン抑制効果を確認するため、被験者3,864人を対象にした臨床試験を実施した。
この抗ガン剤を5年間飲み続け、その後7年間服用を止めた場合、当初から抗ガン剤を飲まなかった人に比べて、乳ガンの発症が 49%減少した。(「Tarmoxifen (タモキシフェン)」の実績は28%減どまり。)
また、抗ガン剤の服用を途中で止めざるをえないほど深刻な副作用も確認できなかった。なお、Anastrozole一錠当たりの価格は 4p(約6円)と、Tarmoxifenの半値以下だ。
この「Anastrozole (アナストロゾール)」は女性ホルモンの分泌を抑え、ガン腫瘍に変異寸前の細胞を死滅させる働きがあると考えられている。
したがって、ホルモンの分泌が盛んな若い女性に対する効果は薄いとされる。また、人によって抗ガン剤の効果や副作用が異なるため、閉経後の女性であっても「Anastrozole」による治療にすべきか、「mastectomy (乳房切除)」に踏み切るべきかを適切に判断するためには、もっともっと研究が必要とのこと。
なお、Cuzick教授らの研究結果の詳細は、医学雑誌「The Lancet」に発表された。
おわりに:「乳ガン」と仰々しく騒ぎ立て、やみくもに、乳房を切除してしまう医者は信用に値しない。そもそも、なぜ乳ガンが発生し、抗ガン剤がどのように働くのかさえ、十分に解明されていないのが現状だ。治療法の選択に当たっては、①最先端の医学情報を可能な限り集積し、②合理的な裏付け・根拠に基づいて、③複数の人間によって判断されるべきだ。今の医療現場で、これができていると言えるだろうか。
(写真は添付のBBC Newsから引用)