南極大陸の東海岸に「Amery Ice Shelf (アメリィ棚氷)」が広がる。この「Amery」は南極大陸で3番目に大きな棚氷(なたごおり)だ。そもそも、棚氷とは、大陸から海に押し出された氷河 (glaciers)が、そのまま海面に浮かんで広がっているもの。大陸の高所に降る雪の量と微妙なバランスを取りながら、なんとか壊れない状態を保っている。
「Amery Ice Shelf (アメリィ棚氷)」の先端部は、まるで小さな子どもの「dentition (歯並び)」のように凸凹で、一部は「Loose Tooth (グラつき歯)」と呼ばれるほど不安定な棚氷だった。したがって、この数年の間に、どこかで「calving (分離崩壊)」があるのではと予測されていた。
先月の9月25日、EUの地球観測衛星「Sentinel 1」は、その棚氷が壊れて、氷山が誕生する様子を捉えた。海に欠け落ちた塊は「Loose Tooth (グラつき歯)」の直ぐ横の部分だった。氷山はD28 と名付けられた。厚さ約210m、重さ3,150万トンもあり、その面積は1,636km2と、Scotlandの「Isle of Skye (スカイ島)」、長崎の平戸島にほぼ匹敵する広さだった。
The Scripps Institution of Oceanography (スクリプト海洋研究所)」の Helen Fricker教授によると、今回の氷山 D28の発生は、気候変動とは無関係であり、1990年代に撮影された衛星写真と比べてみても、「Amery棚氷」一帯は概ね安定しており、直ちに危険が及ぶ状態ではないと言う。
それにしても、夏になると、この棚氷は急速に溶け出している。さらに今回のように、棚氷から大きな塊が抜け落ちて、棚氷全体の「応力分 布(stress geometry)」が変わると、今後、周辺にクラックが発生し、「Loose Tooth (グラつき歯)」の部分も海に切り離される恐れが多分にある。
The Australian Antarctic Division (オーストラリア南極局)」は、さっそく、「Amery棚氷」に観測機器を設置したという。
(写真は添付のBBC Newsから引用)