夜のコーヒーは止めた方が良い。これが、これまでの常識だった。その理由として、『コーヒーに含まれるカフェインが、脳内ホルモン「melatonin (メラトニン)」の分泌を阻害し、目が冴えて眠れなくなってしまうから』と説明されて来た。
ところが、その常識を完全に覆す論文が医学雑誌「Sleep」に発表された。
Florida Atlantic大学とHarvard Medical Schoolの合同研究チームが、「caffeine (カフェイン)」、「alcohol (アルコール)」、「nicotine (ニコチン)」の摂取と睡眠との関係を確認するため、大規模な長期間追跡調査」を実施した。
被験者のボランティア785人には、健康データをチェックする「wrist sensors (リスト・センサ)」を巻いてもらい、その上で、5,164日 (約14年間)の睡眠状況が記録された。
その結果は意外だった。
就寝前の4時間の間に(ほとんど午後5時以降)、飲酒、喫煙をすると、いずれも睡眠が妨げられることが確認された。とくに、不眠症の人が就寝前にタバコを1本吸うと、睡眠時間が42分も減少することが分かったという。
ところが、就寝前にコーヒーを飲んでも、「total sleep time (総睡眠時間)」、「sleep latency(入眠潜時)」などの「sleep parameters (睡眠パラメータ)」に、なんら影響を与えなかった。つまり、『夜のコーヒーは、睡眠に影響しない』という結論が得られたのだ。
ただし、被験者のカフェイン摂取量、カフェインに対する過敏性 (sensitiveness)については、厳密に測定することができなかった。また、被験者はアフリカ系を含むUS在住の人だったが、人種が違うと、データ解析の結果が異なる可能性もあるとのこと。
一方、この研究とは別に、Harvard Medical School (ハーバード大学医学大学院)が発表した研究論文によると、適度なコーヒー (a moderate amount of coffee)、すなわち1日3-4杯のコーヒーと、長生き(longer life span)との間には関連性が認められるという。
さらに、コーヒーに含まれるカフェインには健康を害するリスクもあるが、コーヒーを飲むと、以下に示した特定な疾患の発症リスクを低減させる効果が期待できる。
・cardiovascular diseases:心血管疾患 (心臓発作、心不全、脳卒中など)
・type-2 diabetes :2型糖尿病
・Parkinson's disease:パーキンソン病
・uterine cancer:子宮ガン
・liver cancer:肝臓ガン
・cirrhosis:肝硬変
・gout:痛風
ただし、夜の熟睡が希望なら、午後2時以降のカフェイン摂取を避けること。カフェインは、コーヒー以外の
・tea:緑茶、紅茶
・fizzy drink:コーラなどの炭酸飲料
・energy drink:栄養ドリンク
にも含まれているので、ご注意。
おわりに:「カフェインと睡眠との関係について、決着がついた」とは、言いがたい。1本の論文に判断を左右されてはならない。「君子危うきに近寄らず」の姿勢が大切だ。
(写真は添付のRTE Newsから引用)