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矜恃(pride)、不服従、そして世界制覇:UK英語とUS英語の戦い! (BBC-Capital, June 14, 2019)

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 Londonの大英博物館には、戦争を辞さないほどの、イギリス国家の威信と矜恃を掛けて、世界中から収集した数多くの貴重品が収納、展示されている。古代エジプトのミイラが所狭しと陳列され、これを見る人には、収集家の並々ならぬ執念(しゅうねん)が伝わってくる。
 中でも、大英博物館が世界に誇るのは、「Rosetta Stone (ロゼッタ・ストーン)」。古代エジプトの神聖な象形文字ヒエログリフ」の解読に切っ掛けを与えた石碑だ。薄暗い照明に照らし出された、その石碑の前に立つと、数千年の時間がタイムスリップする。かって、これを刻んだ人々が、はるか遠方の地で生活を営み、高度な文明がそこにあった証(あかし)だ。

 ヒエログリフ表意文字表音文字の組合せで構成される。それは、まるで、漢字とひらがな・カタカナの組合せから成る日本語に似る。

 ところが、英語はこれとは違い、基本的には「表音文字」の羅列だ。しかし、英単語には、発音しない文字、すなわち「silent letters (黙字)」を含むものが多い。
 それに、英語と言っても「British English (イギリス英語)」と「American English (アメリカ英語、米語)」がある。

 それはなぜか。その質問に対する答えは、「まさに、英単語こそが、ヨーロッパのロゼッタ・ストーンそのものだから」。
 英単語の一つひとつには、かって、これを話し、記録に書き留めた人々の文化と歴史の変遷が刻まれている。歴史が動き、他民族文化との融合が進む中で、英単語は、その姿を複雑に変えた。一見、例外が多く、規則性に欠けた「opaque (分かり難い)」言語のように思えるが、その複雑さ、曖昧さにも理由があるのだ。

 中世の初め頃までEnglandで話されていた「Old English (古英語)」では、発音どおりに「could」を「cude」、「island」を「iland」と書いていた。それを現在の語形に修正した経緯については、Crystal教授が、以下の参考文献の中で丁寧に説明してくれる。

・David Crystal: Spell it out: The Singular Story of English Spelling, Profile Books, 2012

 日本では大学の英語の授業でさえ、ほとんど英単語の歴史も、その構成の意味も重要視されないが、Crystal教授に言わせると、それは、間違い。「急がば回れ」。むしろ、なぜ「could」は発音どおりに書かれないのか、あるいは「predominant」の単語は、どのように分析して読み解くのか。それが理解できれば、子どもの英語の習得が早まると説く。

 さらに、「British English」と「American English」との間には、覇権を巡る熾烈な戦いがあった。  
 そもそも、「Noah Webster (ノア・ウェブスター[1758-1843])」が、「The Oxford English Dictionary」の向こうを張って、「American English」の辞書を編纂した理由は、英単語を簡素化し、移民の国USの「識字率 (literacy rate)」を高めるためにある訳ではなかった。 

 経済力を付けるに従って、アメリカ人は、アメリカ人としての矜恃 (pride)を強めた。
American English」は「本国」UKに対する「不服従」のシンボルでもあったのだ。
 これが、「centre」を「center」に、「colour」を「color」に変えた背景。互いに譲れないはずだ。

 そして、「Google」が、事実上「情報・ネット世界」を制覇する。これで「American English」は、ほぼ主流の座を手にした。人の目が慣らされることは恐ろしい。今や、「program」を「programme」, 「organaization」を「organisation」と書くと、野暮ったさと、やや古めかしい感じを与えるほどだ。

 いつの間にか、科学論文でも、「Oxford comma」が省略されて、「A, B and C」の記述がとおり、「grammar of English」、「rate of literacy」がUSスタイルの「English grammar」、「literacy rate」に変わりつつある。

 しかし、これだけは覚えておいて欲しい。どんなに流ちょうな英語を話せても、あるいは話せると思い上がっても、「Oral English (はなしことば)」をそのまま文章にしたところで、まともな英語にはならない。「Writing English」や、その基礎となる「Oxford Style Manual」,「Practical English Usage」を決してバカにしてはならない。品格を下げるだけだ。基本はしっかり学ぶこと。

               (写真は添付のBBC Newsから引用)

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