大学の学生食堂では若ものの食の嗜好傾向が、よく見える。かって、スコッチ・エッグが人気をはくし、鶏肉の唐揚げが好まれたり、大盛りの味噌ラーメンに注文が殺到したときもあった。ところが、この頃は、ご飯の代わりに、ドーナッツやケーキを昼食時のトレーに乗せる男子学生も現われた。
食の好みは千差万別とは言え、人ごとながら、あれで「健全な食生活 (healthy diet)」が保てるかのかと、心配にならなざるを得ない。
さて、WHOは「ultra-processed foods (ウルトラ加工食品)」には発がん性があると警告する。しかし、人はなぜ、この、鮮やかな着色料で色づけられ、あれやこれやの化学化合物で味付けされた加工食品に手を出してしまうのだろうか。
「The US National Institute of Health (アメリカ国立衛生研究所)」の Dr Kevin Hallらの研究グループが、ウルトラ加工食品に関する興味深い実験を行なった。
まず、糖分、炭水化物、脂肪、食物繊維などの成分をまったく同じに調整した2種類の食品、すなわち「ウルトラ加工食品」と、魚介類や野菜・果物からなる「自然食品(unprocessed foods)」をそろえた。その上で、ボランティア20人に研究室で寝泊まりしてもらい、2週間ごとに、どちらかの食品を好きなだけ食べてもらったという。
その結果、ウルトラ加工食品を2週間食べ続けると、自然食品を食べるときに比べて、1日当たり505カロリーも過剰に摂取し、2週間で体重が約 1kg増えることが分かった。
人が自然食品を食べると、「appetite-suppression hormones (食欲抑制ホルモン)」の一種「Peptide YY」が分泌され、「hunger hormones (飢餓ホルモン)」の「ghrelin (グレリン)」の分泌が抑制される。ところが、どうやら、ウルトラ加工食品には、このホルモンの分泌システム変えてしまう働きがあるらしいと、研究者は見る。
確かに、ピザ・ハンバーグ、即席ラーメンは、電子レンジでチンあるいはお湯を注ぐだけで簡単に食べられる。その上、食事代も安上がり。味だってそこそこ。
しかし、食品のパッケージに表示された成分表には、日本語であれ、英語であれ、数え切れないほどの成分が、小さな文字で書き並べられているはずだ。
Dr Hallによると、どんなものが「ウルトラ加工食品」かと聞かれると、その答えは、何が「pornography」に当たるのかと同じくらい難しいそうだ。しかし、確実な「危険信号 (warning signs)」は、次のとおり。
・ingredients you cannot pronounce.
・more than five ingredients listed on the packet.
・anything your grandmother would not recognise as food.
・読めない成分が含まれるもの
・成分表欄に5種類以上の成分が書き込まれているもの
・おばちゃんには食べ物だと分からないもの
ウルトラ加工食品は、便利だがリスクの大きい食べ物。口当たりが良くて美味しい。これを食べると、「もっと食べて、もっと食べろ」と、どこからか、ささやく声が聞こえる。あれは悪魔の声か。
(写真は添付のBBC Newsから引用)