「winners (勝ち組)」と「losers (負け組)」とは、嫌な呼び方だ。争いに勝つとは、どういうことか。生存競争で優位に立つことか。しかし、競争相手に勝ったところで、あるいは、それを打ちのめしたところで、勝者の優位はいつまで続くのだろう。
昆虫の世界、とくに「pollinating insect (花粉媒介昆虫)」の「wild bees and hoverflies (野生ミツバチとハナアブ)」で、「種の淘汰 (selection)」が急速に進行している。
「The Centre for Ecology and Hydrology (英国生態学・水文学センターCEH)」のDr Gary Powneyらの研究グループは、1980年から2013年にかけてUK全土で実施されたボランティアによる目撃情報 (sighttings)70万件以上に基づいて、UKに生息する353種の野生ミツバチとハナアブの個体数の変化を分析した。
その結果によると、「bumblebees (マルハナバチ)」の仲間22種、全体の約10%の種は個体数が増加していた。しかし、その一方で、地面の下に巣をつくる「solitary bees (単独行動ミツバチ)」や、比較的寒冷地の山脈・高地に生息する「upland bees (山地ミツバチ)」などの「rare species (希少種)」は、この33年間で個体数が40-55%も激減していることが分かった。
「pollinating insect (花粉媒介昆虫)」を激減させている原因は、次の3点。
・Destruction of wild habitat:野生生息地の破壊
・Use of pesticides:農薬の使用 (とくに、ネオニコチノイド系殺虫剤)
・Climate change:気候変動
このまま、ごく少数派の勝ち組の繁栄、多数派の負け組の衰退の状態が続くと、やがてUKでは、希少種とされる野生ミツバチの種は全く姿を消して、昆虫種の「biodiversity (多様性)」が失われることは明らか。この小さな損失が、生物全体の脆弱性をもたらし、延いては、地球全体の「ecosystem (生態系)」に大きな影響を与えかねない。
野生ミツバチの世界のようすは、どこか人間界に似ている。不気味の一言に尽きる。
(写真は添付のBBC Newsから引用)