毎朝、かぐわしい一杯の珈琲 (コーヒー) は、至高の生きる喜びを与えてくれる。
ところが、そのコーヒーの木が危うい。このまま、気候変動が続くと、2088年には野生種の 50%以上のコーヒーの木が、地球上から消えてしまいかねない。そんな研究結果が科学雑誌「Science Advances」に発表された。
コーヒーの木 (coffee trees) はアカネ科 (Rubiaceae) コーヒーノキ属 (Coffea)の植物で、世界には124種の野生種が知られている。大々的に栽培され、市場に出回っている種は、その野生種の中で「Coffea Arabika (アラビカ種)」と「Coffea Robusta (ロバスタ種)」の2種だけ。(Coffea Liberica (リベリカ種)は全生産量の1%未満。)
しかし、「The Royal Botanic Garden, Kew (英国王立植物園キューガーデン)」の Dr Aaron Davisらの調査によると、エチオピアの熱帯雨林高原に自生するアラビカ種を含め、コーヒーの野生種の約60%は、気候変動、自生地の消滅、病害虫の発生などのため、絶滅の危機にさらされているという。
なお、コーヒーの木の他にも、地球上の植物の22%が絶滅の危機に陥っている。たとえば、身近な植物の危機状況は以下のとおり。
・茶、マンゴーの野生種:50%
・ヘーゼルナッツの野生種:6%
・ピスタチオの野生種:9%
特定の植物種が一度、地上から消えると、同類系の多様性が失われ、植物は環境の変化に極めて脆弱になりかねない。予測不可能な将来の病害虫の発生や気候変動に対応し、生き残るためには、進化の過程で勝ち取った「種の多様性」が強力な武器になってきたのだ。
したがって、今は、とても商品化できないコーヒーの野生種であっても、野生種124種を維持することは、栽培種の品種改良を図る上でも極めて重要だ。とくに、コーヒーの種 (seeds)は「freeze-drying process (凍結乾燥法)」による保存に適さず、発芽率はわずか55%。
さて、100年後、いや50年後だって、人類はコーヒーカップを手にすることができるだろうか。コーヒーの木は植物園でしか見られない貴重な植物になっていて、コーヒーは、ほんの一部の億万長者だけが口にできる飲みものになっていそうだ。
謝辞:この一文をまとめるに当たって、以下の優れた「The Guardian」の記事も参照した。記して謝意を表したい。
The Guardian: January 16, 2019
・Six in 10 wild coffee species endangered by habitat loss
(写真は添付のBBC Newsから引用)