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Elf (エルフ) の魔力を見た!:その「フルドゥフォルク」の世界とは (BBC-Travel, December 18, 2018)

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 こんな不思議なことがあった。遠い北の国 Icelandで実際に起きたことだ。

 Reykjavík(レイキャヴィク)の住人 Mr Sigtryggur Baldursson (シチュルガー・バルデュルソン)の祖母が、末期ガンで危篤状態になった。その夜、Mr Sigtryggur の母は、病人に付き添っていたが、眠気に襲われて、つい、ウトウトしてしまう。
 ふと、物音に気づいて目を覚ますと、祖母の病室に 2人の医師と看護婦が入って来て、互いに何か話しながら、祖母の治療を始めた。祖母も、それに応えて話している。すると、医師の一人が「うん、これなら、すぐに良くなるよ」と言った。母は、それを聞いてホットし、また眠ってしまった。
 
 翌朝、祖母が目を開けたので、母が前夜のことを尋ねると、本人は何も覚えていないと言う。その後、祖母は奇跡的な回復を遂げた。

 また、こんなこともあった。
 Icelandの人気歌手「Jófríður Ákadóttir (ヨフィゾル・アウカドッティル)」は、9歳のときの出来事を、今でも忘れることができない。
 ある日、アパートの空き地で遊んでいた。そこには、子どもの Jófríðurの背丈よりも 2倍はある巨大な岩が、地面から突き出ていた。みんなから、「elf rock (エルフの岩)」と呼ばれ、elf (エルフ)の邪魔をしないように、そっとしてあげるようにと言われていた。
 ところが、お茶目な Jófríðurは、友だちが口々にやめろと叫ぶのに、その岩によじ登る。そして、岩のてっぺんから飛び跳ねた。すると、口の中から真っ赤な血が溢れ出し、Jófríðurは、泣いて家に帰ったというのだ。

 この 2つのいずれのエピソードも、実際に経験した本人たちにとっては、本当にあった話だ。elf (エルフ)との遭遇を信じて疑わない。ところが、elfを信じるのは 2人だけではない。Iceland大学が2007年に行なった調査によると、Iceland国民約 34万人の 62%は、「elf (エルフ)」がこの世に本当に存在すると信じている。

 「elf (エルフ)」とは、「小妖精」のこと。J.M. Barrie は「Peter Pan (ピーター・パン)」の中で「Tinkerbell (ティンカーベル」として登場させた。
 Oxfordの辞書は次のように説明する。

Elf: a supernatural creature of folk tales, typically represented as a small, delicate, elusive figure in human form with pointed ears, magical power, and a capricious nature.
[ エルフ:民話の中に登場する超自然的な生きもの。その多くは、ちっちゃくて繊細で、めったに人間に姿を見せることがない。姿は人間の恰好だ。しかし、耳はとんがり耳。魔力を持っていて、性格は気まぐれ。]
出典:The Concise Oxford Dictionary of Phrase and Fable, Oxford Univ Press, 2003

アイスランド人にとって、「elf」はアイスランド語の「huldufólk (フルドゥフォルク)」の方が馴染みやすい。Icelandの huldufólkは、人間とともに暮らす平和な人たちだ。来る日も来る日も、同じことを続けても、飽きることがないという。毎日、釣りに出かけたり、野良仕事に精を出したり、家族の世話をして暮らしている。そして、ときに、人間が死のせとぎわに追い詰められると、その魔力を使って助けてもくれる。

 「huldufólk (フルドゥフォルク)」の多くは、Icelandの「beaches (海岸)」や「lava fileds (溶岩原)」に住んでいると信じられている。Icelandでは、宅地に「elf rocks」とおぼしき岩を発見したら、勝手に取り除いたり、砕いてはいけない。そんなことは、タブーとされているのだ。

 Icelandはヨーロッパにあってヨーロッパではない国。そこは、ヨーロッパで1700年代に始まった合理主義的な「Enlightment(啓蒙旋風)」が及ばなかった場所でもある。その時代、人びとは、理屈で説明できないものは何でも否定し、破壊した。人びとを互いに結びつけていた「faith (信仰)」を殺し、「myth (神話)」を抹殺し、「psychic ability( 超能力)」を殺した。

 幸いなことに、Icelandはヨーロッパ大陸から遠い北の果てにあったため、その「啓蒙旋風」から逃れることができた。しかし、それも、1941年アメリカ軍がやって来て、変わったという。人びとの心が、アメリカ軍の「Enlightment」によって壊され始めたのだ。

 それでも、アイスランド人は、たとえ、国は小さくとも、心は広いと胸を張る。次元の異なった世界に住む「huldufólk (フルドゥフォルク)」の暮らしに、思いを馳せる心の余裕がある。

 ある物理学者は、文学 (literature)を非難し、『要点が数行で済むような内容を、なぜ、クダクダと文を綴るのか』と言った。
 理屈づめに凝り固まった人と、huldufólkを信じる人。あなたはどちらを味方につけますか。
                   (写真は添付のBBC Newsから引用)

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