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小ダヌキの騎馬合戦 (寓話):Tanuki国の王さま大いにご満悦! (FAB-Politics, August 28, 2018)

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 きょうは、ちょっと、わき道に入って、道草。

 「ローマは1日にして成らず (Rome was not built in a day.)」ではあった。しかし、同時に「Rome was not decayed in a day. (ローマは1日にして腐らず)」でもあった。

 広大なヨーロッパの地を支配した古代ローマ帝国も、初代皇帝「Augustus (アウグストゥス)」から何世代も時代が過ぎると、ローマの市民は戦争に飽き、政治に飽き、贅沢な毎日の生活にも飽きた。皇帝は、その絶大な権力、威厳、栄誉を市民の前で誇示しようにも、その見せ場を失った。やがて、誰も、以前のように皇帝に対して深い敬意を示さないようになる。民衆にとって、皇帝は、誰でも良くなったのだ。
 皇帝は、この民衆の心の変化に焦(あせ)りを感じる。

 すると、「Crocodile (ワニ)のようにずる賢い男」が、皇帝の耳元でささやいた。
 『皇帝の名の下に、巨大な Colosseum (コロセウム)をつくり、皇帝の名の下に、Gladiator (剣闘士)を戦わせ、皇帝の名の下に、敗者の Life-or-death (生死)をご裁断下さいますように。さすれば、Colosseum (コロセウム)は、圧倒的な興奮の喚起に包まれて、その場に居合わせた観客の皆が、皇帝の名を口々に連呼し、皇帝の力に酔いしれることでしょう』と。

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 時を経て、この話は、東方のTanuki (タヌキ)の国にもたらされる。その国のタヌキも、かっての古代ローマ人のように、「そこそこの毎日の暮らしには満足していたが、政治には飽き飽きし、何しろ、毎日が平和過ぎて、退屈していた。」
 このままではTanuki国の政治が危うい。
 
 ある日、悪知恵の働くキツネがTanuki国の王さまに近づき、まんまと、高額な給金を約束させて、「王さま顧問」に取り立ててもらうことに成功する。そして、王さまにささやいた。
 『王さま。王さまは、ただちに、王さまご支配の全ての地、在郷の隅々の集落まで「messengers (使い)」を走らせて、「Cavalry-war-games (騎馬合戦)のお触れを出すことです。ただし、その合戦は小ダヌキに限るのです。さすれば、おとなダヌキは、集落対抗の合戦シーズンを「carnival time (お祭り)」と捉えて、大いに沸くことでしょう。王さまは、合戦の勝者を称える式場でスピーチして、その威厳を示し、部下タヌキたちの信頼を勝ち取ることもできます』と。

 こうして、Tanuki国では、在郷のタヌキの集落という集落で、馬を用意し、小ダヌキに槍や刀を持たせて、連日連夜、太鼓を叩き、ホラ貝を吹き鳴らしては、騎馬の戦いの練習に明け暮れた。その地響きと埃と騒音は、近くに居を構えていたタヌキたちを大いに苦しめた。

 しかし、タヌキの集落によっては、そこの名主が大金をはたいて、わざわざ都から名馬を買い求めたり、名の知れた武芸者を呼び寄せて、小ダヌキの「勝ち戦(いくさ)」に夢を懸けた。

 やがて、葉月の月夜の晩に、小ダヌキたちの騎馬合戦の幕が開く。試合は意外な展開を示すこともあり、Tanuki国では、どのタヌキも日頃の退屈を忘れて、その目は試合の行方に釘付けになった。
 王さまタヌキ、と言っても悪知恵の働くキツネのねらいは、みごとに的中したのだ。

 Tanuki国の騎馬合戦は、ただの小ダヌキたちのゲームだ。しかし、勝ち組の小ダヌキたちは、その集落を挙げた勝利記念会で褒めそやされ、その後、勢いづいて集落でわめこうが、泣き叫ぼうが、治安維持に雇った野良犬に咎められることはなかったと記録に残す。

 人間界では、今から二千数百年前、中国の哲学者「老子」が「天網恢々疎にして漏らさず」と唱え、人は「真っ正直」に生きるべしと諭(さと)した。古代ローマの皇帝が犯した悪行の数々は、天の神の知るところとなり、皇帝の多くは非業な最後を遂げた。もちろん、古代ローマ帝国も地上から消える運命をたどる。

 ところが、Tanuki国では、天網もボロボロに破れて、穴だらけになってしまい、正しく生きるタヌキの願いが天に届くことはなかったと言う。

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