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アドレナリンは悪魔の取引:生存率0.08%upのために魂を売る! (BBC-Health, July 19, 2018)

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「失いかけた命をアドレナリン (adrenaline)が救う」などと、いったい誰が、どんな科学的根拠 (evidences)があって言い始めたことだろう。しかも、この60年近く、医療関係者はなんの疑いもなく、ほとんど盲目的に緊急時のアドレナリン注射を「standard care(標準的な治療)」に組み入れて来た。
 
 アドレナリンは「エピネフリン (epinephrine)」とも呼ばれ、副腎髄質から分泌されるホルモンで、神経伝達物質 (neurotransmitters)でもある。人間や動物が戦闘態勢に入ると、このホルモンが分泌されて心拍数・血圧が上昇し、筋肉の俊敏な運動能力も高まることで知られている。

 しかし、このホルモンの人工的な合成に成功すると、救急救命措置に多用された。すなわち、「cardiac arrest (心拍停止)」で倒れた人に対しては、直ちに人工呼吸・心臓マッサージなどの「Cardiopulmonary Resuscitation (心肺機能蘇生法CPR」、「Automatic External Defibrillation (自動体外除細動器AED)」による救命措置が実施される。それでも蘇生の見込みがないと判断されるとき、救急救命士 (paramedics)は、ガイドライン手順に従って「アドレナリン注射 (Adrenalin shot)」を患者に打つのが一般的だ。

 UKでは毎年30,000人を越える人が「心拍停止」で倒れ、その半数以上が「Adrenalin shot」を受けている。「心拍停止」は致命的な病気であり、幸運にも病院から退院できる患者は10%にも満たない。

 さて、Warwick大学のGavin Perkins教授らの研究グループは、心拍停止で救急車の出動を受けた患者約 8,000人に対して、アドレナリン注射の効果を調べたところ、なんとアドレナリンを受けた人と受けなかった人の「30日間生存率」の違いは、わずか0.08%。
 ところが運良く生き延びても、脳に重い障害が残り、植物人間になったり、歩行困難になる確率は、アドレナリン注射を受けると、これを受けなかった人に比べて、約2倍も高くなることが分かった。その原因は不明だ。

 これまでの医療措置、ガイドラインの見直しが必要なことは明らかだ。わずか生存率 0.08%upのためにアドレナリン注射を打ち、たとえ生き延びても、脳に重い障害を受け、おまけに「魂のない植物人間」になるリスクまで高いとは...。これが現代医療かと、呆れてしまう。この事実をしっかりと情報公開し、緊急時に当たって、どのような医療措置を希望するのかについては、患者本人が選択できるようにすべきであろう。
 
 なお、「Writing skills」に興味のある方には、次の「The Guardian」の記事の一読を薦める。情報伝達の違いが発見できれば、また楽しい。

The Guardian: July 19, 2018
・Routine treatment likely to change the way cardiac arrest doubles risks of brain damage - study

                   (写真は添付のBBC Newsから引用)

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