挿し絵は、読書を10倍も、100倍も楽しくしてくれる。ページをめくって、すぐに目に飛び込む挿し絵には、読者を一瞬にして本の世界に引き込む「凄さ」がある。
・「Lewis Carroll (ルイス・キャロル)」の「Alice's Adventures in Wonderland (不思議の国のアリス)」の場面を心憎いばかりに描いた「Jon Tenniel (ジョン・テニエル)」。
・「Roald Darl (ロアルド・ダール)」の「The Twits (ろくでなしの二人)」、「The Enormous Crocodile(どでかいクロコダイル)」などの作品も、Quentin Blake (クェンティン・ブレイク)の絵がなかったら、肉料理は肉料理でも、スパイスに欠けた肉料理のようなもの。
・吉川英治の「宮本武蔵」には、「矢野橋村・石井鶴三」の挿し絵がなくては、武蔵の「生きざま」が具体的に見えてこない。
そして「Winnie-the-Pooh (クマのプーさん)」、「The House at the Pooh Corner (プー横町にたった家)」に登場するクマ、小ぶた、トラ、カンガルー、ロバなどのぬいぐるみは、「E. H. Shepard (シェパード)」によって生命の息吹(いぶ)きが与えられた。
「クマのプーさん」の作者「A. A. Milne (ミルン)」は、1882年、Londonの高級住宅街「Hampstead (ハンプステッド)」に生まれる。Cambridge大学の数学科を卒業した後、雑誌「Punch (パンチ)」の編集の仕事を続けていたが、「Christopher Robin」が生まれたことが切っ掛けとなり、「Winnie-the-Pooh」を執筆し、世に出した。著名な挿し絵画家「E. H. Shepard」との巡り合わせもあって、この本は大成功を納める。
その後、Disney (ディズニー)が登場人物のキャラクターをさらに強調、発展させたアニメ映画「Winnie-the-Pooh And The Honey Tree (クマのプーさんと蜂蜜の木)」(1966)を制作し、その人気は揺るぎないものになった。
Shepardは、クマのプーさんとその仲間たちが活躍した舞台を1枚の地図に描き、これを本の「とびら絵」にしていた。地図の下には、手書きで「DRAWN BY ME AND MR SHEPARD HELPED (シェパードさんに手伝ってもらって、ぼくが描く)」とある。
しかも、いかにも子どもが書いたように、「nice for picnicks」、「100 aker wood」などと、わざと単語の綴りを間違えてある。
その原画が、7月10日(火)、「Sotheby's (サザビーズ)」のオークションで、挿し絵としては過去最高額の£430,000 (約6,400万円)で落札された。
なお、「Winnie-the-Pooh」に興味のある方には、次の2冊をお薦めする。
・A .A.ミルン作・石井桃子訳:クマのプーさん、プー横町にたった家、岩波書店、1962
・A. A. Milne:The Complete Tales of Winnie-the-Pooh、Dutton Children's Books, 1994
上の英語版は、1926年初版の「Winnie-the-Pooh」では白黒だった挿し絵を、Shepardが1973年にカラーに手直しした後に、出版されたもの。その絵は、目を見はるほどきれだ。
(写真は添付のBBC Newsから引用)