ヒロシのWorld NEWS

世界のニュースを日本語でお届け!

マジック・マッシュルーム:「うつ病」重症患者の脳をリセット (BBC-Health, July 1, 2018)

https://ichef.bbci.co.uk/news/904/cpsprodpb/C201/production/_102156694_gettyimages-907568214.jpg

1.幻覚剤の研究が遅れた理由

 1960年代、若ものは、映画「いちご白書 (Strawberry Statement)」に涙し、学生運動にのめり込んだ。そして「counterculture (体制批判文化)」も生まれた。
 さらに、その時代背景にあって、どういうわけか、hippie (ヒッピー), musicians (ミュージシャン), celebrities (セレブ)を中心に、LSD, mescalin (メスカリン), psilocybin (サイロシビン)などの「幻覚剤(psychedelic drugs)が、巷 (ちまた) に急速に広がり始める。

 US政府は、社会が「moral panic (道徳的なパニック)」に陥ることを恐れ、1968年、この種の幻覚剤を非合法化した。追い打ちを掛けるように、その数年後の1971年、「向精神薬に関する条約 (Convention on Psychotropic Substances)」によって、上述の幻覚剤はすべて「Schedule 1 drugs」とされ、、国際的に禁止された。加えて、うつ病に対する幻覚剤の治療効果にも「No」の判断が下された。

 その時点で、うつ病 (depression)治療薬として進められた幻覚剤の研究は、完全に干ぼしにされ、1950-1960年代の、1.000件を越える幻覚剤に関する研究論文も忘れ去られた。

2.マジック・マッシュルーム研究のルネッサンス
 
 幻覚剤の研究は政府の許認可が必要になった。それでも、細々と小規模ながら幻覚剤に関する研究は続けられ、症状が悪化して処置無しの「depression (うつ病)」、「addiction(中毒、依存症)」、「PTSD (心的外傷後ストレス障害)」などの「精神障害(mental health disorders)」には、幻覚剤が効果を示すことは、研究者の間で知られていた。

 幻覚剤の研究の復活「renaissance (ルネッサンス)」に火を付けたのは、USのJohns Hopkins大学の研究チームだった。2000年代になって、マジック・マッシュの幻覚成分「psilocybin (サイロシビン)」には、命にかかわるほどのガンに冒された患者の80%に対し、うつ病の症状をやわらげる働きがあったと発表した。また、この幻覚成分を「cognitive behavioural therapy (認知行動療法)」と併用すると、従来の禁煙治療に比べてはるかに喫煙習慣から逃れることができるとする結果も発表。
 
 そして、2009年、London大学「Imperial College London」のDr Robin Carhart-Harrisらの研究チームは、うつ病患者の脳が「psilocybin (サイロシビン)」によってどのような影響を受けるのかを明らかにするために、「CT scanners (スキャナー)」を使った研究に着手。2017年に、その研究成果の1つが医学雑誌「Science Reports」に発表された。

 その論文によると、psilocybin (サイロシビン)は、脳内で恐怖・不安などの情緒を司る「amygdala (扁桃体)」と、脳内の神経活動を同調させる働きをもつ「default-mode network (デフォルト・モード・ネットワーク)」に作用して、ほとんど治療不可能(untreatable)なまでに重症化したうつ病患者の心から、頑(かたく)に凝り固まった自己破壊的な思考を一掃し、気分を晴れやかにしてくれるという。

 「暗い考え方 (beliefs)」も、「思い込み (assumptions)」も、「中毒 (addictions)」までもがきれいさっぱりなくなり、脳は、まったく新しい「プラス思考 (healthier way)」に再構成 (recalibrale)されるのだ。

3.幻覚剤のリスク

 ただし、「幻覚剤はリスクを伴わないわけではない(Psychedelics are not without risks.)」という。
幻覚剤それ自体に毒性はないと考えられているが、ときに「bad trips(恐ろしい幻覚症状)」に苦しんだり、薬量のコントロールを失って危険に陥る可能性もある。
 また、すでに罹患している「心の病 (mental health problems)」を悪化させることも否定できず、うつ病の発症リスクを抱えた人には「psychotic reaction (精神病性反応)」を招きかねない。

 しかし、今は、何よりも、まず、psilocybin(サイロシビン)が安全であることの「evidence (科学的証拠)」が求められている。

4.いつ頃、うつ病患者に使えるようになるか

 King's College LondonのDr James Ruckerによると、たとえ、今後の大規模臨床試験で、psilocybin (サイロシビン)の安全性、有効性が確認されても、この薬が医療現場で処方されるようになるまでには、少なくとも5年、おそらくはそれ以上の歳月が掛かりそうだという。その理由は

"The process for getting drugs approved is notoriously slow, expensive and bureaucratic."
[ 新薬の認可プロセスは、悪名高いのろさに、高額の経費を要し、官僚的 (お役所仕事)になるためだ。]
                   (写真は添付のBBC Newsから引用)

面白かったら、投票クリックお願いします!

 

www.bbc.co.uk