ネコは人間が嫌いでした。生まれた農家も、兄弟のチンピラ (hooligan)ネコも大嫌いでした。やがて、Orwell川の水が海に注ぐ河口の町Ipswich (イプスウィッチ)にもらわれて、Harry (ハリー)と呼ばれるようになったのも嫌いでした。
そこで、あるとき、ネコは一大決心をし、家出をしたのです。10年前のことでした。
それから、ずいぶん歩いて歩いて、歩き回りました。イギリスはネコにとって結構広いのです。ところが、どこに行っても、気に入った人も気に入る所も、なかなか見つけることはできませんでした。そこで、結局、Ipswichの町にに戻ってきてしまいました。ネコは、自分の足腰の弱さに気づくほど、高齢ネコになっていたのです。
動物保護団体「Blue Cross」の人が、ネコの体に埋め込まれたマイクロチップを見つけて、元の飼い主を探し出してくれました。元の飼い主は、Britain島の西側に引っ越して、飼い主のおじいさんも亡くなっていました。
飼い主の家には、あのチンピラネコがまだ住み着いていたので、年老いたもの同士とあきらめて、飼い主のお母さん Ms Carolyn Clarkと別の家で一緒に暮らすことにしました。
それからは、ネコが飼い主を裏切ることも、家出をすることも二度とありませんでした。
人間は、『10年間も家を空けて、また帰ってくるなんて、記録的』と言っているそうですが、ネコにとっては、どうでもいいことニャンです。
(ネコも自由に生きようとすると、その一生は、残酷。次の一冊は、それを語って余りある。)
・佐野洋子:100万回生きたねこ、講談社、1977