うっとうしい梅雨や暑い夏には、なんと言っても、冷たいビールや清涼飲料水が一番だ。そのどちらも、グラスに注ぐと、白い泡や小さな気泡がシュワーと立ち上る。あれは、二酸化炭素CO2。そのCO2がなければ、ただの「気の抜けた」飲みものになる。
しかし、炭酸水はともかく、ビールにも、泡立ちを良くするためにCO2が注入されていることは、余り知られていない。
そのCO2は、ご存じのように、大気中には有り余って困るほどある。ところが、このところ、イギリスでは工業用CO2が不足し、関連業界が大混乱に陥っている。
CO2不足の原因は、石油化学プラントの副産物CO2を純粋なCO2に精製するUK、欧州の工場がメインテナンスに入り、CO2の生産量が激減したためだ。
あの大手「Heineken」、「Coca-Cola」の生産ラインにも支障が出始めたため、Tesco系列の食品卸販売会社「Booker」は、得意先のバー、レストンなどに対し、ビールは10ケース、ソフトドリンクは 5ケースまでと配送制限することになった。
さらに、イギリス「West Midlands」の小さな瓶詰め工場「Holden's」も、CO2不足の煽りを受けて、6月22日(金)から操業停止に追い込まれ、スーパー「Morrisons」も冷凍用ドライアイスが不足して、店内の「冷凍食品 (frozen food)」の管理に苦慮している。
この他にも、CO2は、包装食品 (packaged food)、あるいは冷凍輸送車のドライアイスの製造にも欠かせないが、いずれの関連業界もCO2不足に悲鳴を上げている。
また、食肉処理場 (abattoir)も深刻な被害を受けている。ブタを解体する際には、「動物保護(animal welfare)」の観点から、一旦、CO2で気絶させる必要がある。したがって、CO2がないと、ブタ肉が生産できないのだ。
Scotland最大の食肉処理会社「Quality Pork Limited、QPL」は、週に6,000頭分のブタ肉を生産していたが、CO2が手に入らなくなり、6月19日(火)以来、操業は停止状態だ。
なお、CO2が不足すると、ブタ肉も、ビール・清涼飲料水、スーパーの食品まで品不足に陥った今回の騒動。CO2の生産の復帰後に、真っ先に、その使用が優先されるのは「食肉処理場」とのこと。ビール業界、小規模工場 (smaller businesses)などは、順番待ちの最後尾 (at the back of the queue)。
このため、CO2不足の影響は、ここしばらくは続きそうだ。
(写真は添付のBBC Newsから引用)