アピセラピー (apitherapy) と呼ばれる聞き慣れない民間療法 (folk remedy)がある。その歴史は古代ギリシャ、古代エジプトに遡 (さかのぼ)るとも言われる。
ミツバチが野山を飛び回ってつくり出した「蜂蜜」、「プロポリス」、「ロイヤルゼリー」などを医療に使用するものだ。ときに、ミツバチの「毒針」を患部に刺すこともある。これは、とくに「蜂針療法 (bee-sting therapy)」とも呼ばれる。
その信奉者によって「rheumatoid arthritis (関節リウマチ)」、「multi sclerosis (多発性硬化症)」、「skin lesions (皮膚損傷)」、「chronic hives (慢性ジンマシン)」などに効果があると信じられて来た。
ミツバチの毒針を使う理由の背景には、毒針で患部に炎症を起こし、これによって免疫システムの抗炎症性反応を誘発するいう考え方がある。
ただし、その効能が医学的かつ明確に確認されているわけではない。効き目の信憑性のほとんどは「anecdotal (言い伝え)」のレベルに留まり、「evidence (科学的な根拠)」は薄い。
そもそも、このアピセラピーが騒がれ始めたのは、USの女優「Gwyneth Paltrow (グウィネス・パルトロー)」が、2016年、「The New York Times」のインタビューで、この効能を宣伝したためだ。
その後の2017年、Scotlandの俳優「Gerard Butler (ジェラルド・バトラー)」が映画の撮影中に傷めた筋肉を治そうと、ミツバチの毒針治療を受けた。ところが、あの頑強なButler氏でさえ、急性アレルギー反応の「anaphylactic shock (アナフィラキー・ショック)」で心臓が爆発しそうになり、急遽、病院に搬送された。
急性アレルギー反応は重度の脳卒中を引き起こしたり、臓器不全を発症させて「植物状態 (permanet coma)」にすることもある。
そして、ついにアピセラピーの犠牲者がスペインで発生した。
その女性(55歳)は「muscular contractures (筋拘縮)」の炎症と「stress (ストレス)」を緩和しようと、この2年間、月に1回、ミツバチの毒針を使ったセラピーをプライベートト・クリニックで受けてきた。
しかし、その治療中に突然、喉がゼイゼイとなり、息切れしたかと思うと意識を失った。すぐに病院に運ばれ、手当を受けたが、「multiple organ failure (多臓器不全)」を発症し、数週間後に死亡した。
なお、スペインHospital大学のMr Ricardo Mdrigal-Burgaletaらの研究チームは、アピセラピーの治療効果について調査し、その結果を医学雑誌「The Journal of Investigational Allergology and Clinical Immunology」に発表した。
Mdrigal-Burgaleta氏は次のように述べる。
"The risk of undergoing apitherapy may exceed the presumed benefits, leading us to conclude that this practice is both unsafe and unadvisable."
[ アピノセラピー治療のリスクは、予想をはるかに超えたものだ。したがって、この治療法は危険で、(一般の人には) 勧められないとの結論に達した。]
(写真は添付のBBC Newsから引用)