化け物ではない。顔は人間、体も人間ながら、冷酷無情、極悪非道の限りを尽くす人間は数知れない。さしずめ、その筆頭に挙げられるのは古代ローマのネロ、ドイツのヒットラー。それにイングランドの「リチャード3世 (Richard Ⅲ)」か。
Shakespeare (シェークスピア [1564-1616])は、その戯曲「Richard Ⅲ」の中で、醜悪にして薄汚ない心で権力の頂点に立った男を「hedge-hog (ハリネズミ)」と呼んだ。
おそらく、Shakespeareが住み暮らした時代の Londonには、至る所の「生け垣(hedge)」を小さな小さな「ブタ (hog)」が這いずり回っていたと思われる。
それから時代は変わりに変わり、「hedgehogs (ハリネズミ)」の個体数も減り続けた。1950年代には 300万匹を数えた「hedgehogs」が、現在、イギリス全土の総個体数は推定約 100万匹。とくに、この20年足らずの間に約 50%も数を減らした。
Hedgehogは、モクラ (moles) の仲間で、「insectivore (食虫動物)」。襲われると丸くなって全身の針を突き当てる。人間に追いかけられても、することはただそれだけで、実際のハリネズミ君は Shakespeareに非難されるほど悪い性格でも、悪いこともしない。第一、食べるものと言えば、昆虫、ミミズ、キノコにベリー類だ。古代エジプト人はこれを食糧にしたが、ヨーロッパ人は、古くから、コーモリと同類の悪魔の手先と考え、忌み嫌った。
Hedgehogの天敵は「badgers (アナグマ)」。しかし、その数を減らした最大の原因は人間にある。農家は、戦後、近代化と称して集約農業 (intensive farming) を推し進めた。殺虫剤(pesticide)を大量に使用したため、エサとなる昆虫が消え、イギリス伝統の生け垣 (hedgerows)や雑木林 (copses)、耕作地のグリーンベルト (field margins) が消えて営巣地 (nesting sites) を失った。
さらに車が増えたせいで、道路を渡る hedgehogsが次々に犠牲になった。
一言で言えば、現代社会の「余裕の無さ」が、hedgehogsを追い詰めてしまったのだ。
イギリス政府は、EU離脱を機会に農業政策を見直し、これまで農家の支援に回してきた補助金を野生生物の保護活動に当てる意向とか。
農業と環境保護のバランスを今後どのように保つべきか。大変な「知恵」が必要だ。
(写真は添付のBBC Newsから引用)