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「ものづくり」の原点はカラスにあった?:不正のない、優れた技術 (BBC-Science & Environment, January 22, 2018)

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 カラス (crows) の鳴き声は日本語も英語もほとんど同じで、「caw caw (カア カア)」。また日本語の「カラス」も英語の「crows」も、その鳴き声の擬声語(onomatopoeia) から派生した語だ。

 カラスの飛翔力には定評がある。さらに、その頭脳も、鳥の仲間では、ずば抜けている。とりわけ、「New Caledonian crows (カレドニアガラス)」は、巧妙な「ものづくり(tool-manufacturing)をやってのける。
   これを発見したのは Scotlandの「University of St Andrews (セント・アンドルーズ大学)」の Christian Rutz教授らの研究グループ。「New Caledonia (ニューカレドニア)」は、オーストラリア大陸の東方約 1,200kmの南太平洋に浮かぶ島々で、フランスの海外領土だ。

 New Caledoniaの「Grande-Terre Island (グランドテール島)」に生息するカレドニアガラスは、親から手ほどきを受けたわけでもないのに、「Spontaneously (ごく自然に)」小枝を加工して、樹の孔の奥に隠れた小さな虫やクモを釣り上げる。つまり「hooked stick tools (釣り竿)」作りの「technology (技術)」を完成させていたのだ。

 その竿は、次の「multi-stage process (複数の作業工程)」を経て作り上げられる。

1) detachment of a branch (小枝を折る)
2) sculpting of a treatment hook from the nodal joint (節付きのフックを作る)
3) additional adjustments (仕上げ作業)
・length trimming (竿の長さをそろえる)
shaft bending (竿に反りを付ける)
・bark stripping (竿の皮を剥ぐ)

 そして、できあがった釣り竿を使って、虫を釣り上げる技は、「proficient (名人芸)」。知能指数の高いと言われるチンパンジーでさえ、とても敵うものではない。

 Rutz教授らの実験によると、フック(釣り針)の付いた釣り竿を使うと、普通の小枝(simple twigs) を使うのに比べて、エサを樹の孔からほじくり出して釣り上げるスピードは 10倍速くなることが分かったという。

 なお、人間は最も知恵の発達した霊長類 (primates)。しかし、その人間が釣り針を作れるようになったのは、わずか約 23,000年前とされる。沖縄の洞窟で2016年に発見された、人類史上、最古の釣り針「貝殻の釣り針 (seashell-carved hooks)」が、それだ。

 釣り針の発明は「カレドニアカラス」の方が早いとなったら、人類のメンツが丸つぶれだ。
 なぜ、そのカラスの小さな頭脳が、巧妙極まる釣り竿を作らせ、その技術を進化させたのか。「ものづくりの原点 (origin)」には何があったのか。Rutz教授らの研究結果は、人間・動物の技術史の謎に一つの「insight (識見)」を与えるものとして高く評価されている。

 Würzburg大学の Mr Juan Capuenteが指摘するように、「人類はもっと『humble (謙虚)』になるべきだ」。確かに、「ものづくり」に邪悪な知恵が働くと、ごまかし、不正で塗り固めた製品ができあがる。カラスに学ぶべきことが多いかも知れない。

 また、Rutz教授によると、New Caledonian crows (カレドニアガラス) の「ものづくり」の進化は、おそらく、これで終わることはないだろうという。いつか、もっと優れた道具 (tools) をつくり出すかも知れないと。

 一連の研究結果は科学雑誌「Nature Ecology and Evolution」に発表された。
 
                   (写真は添付のBBC Newsから引用)

www.bbc.com