地球上の全ての植物・動物の細胞は、細胞分裂して増殖する。人間の体の細胞分裂の際には、「genetic instructors (遺伝的指令)」が組み込まれた DNA 塩基配列を正確に複製する必要がある。しかし、なんらかの原因で、この作業にミスが発生すると、ガン腫瘍細胞 (cancerous ells) がつくり出され、これは正常細胞よりも急速に増殖して、コントロール不能となる。
この細胞分裂過程で重要な役割を担うのが、DNA合成酵素の「RNA polymerase Ⅲ (RNAポリメラーゼⅢ)」。この酵素は、正常な細胞のDNA情報を確実に読み取り、原物とまったく同じDNAを精密に転写 (transcription)する分子機構 (molecular machinery)。
細胞分裂に欠かせない酵素「RNA ポリメラーゼⅢ」が、ガンに乗っ取られ (hyjacked)たら、ガンは暴走してドンドン進行する。逆に、壊れたコピー・マシンさえ修復できれば、ガン治療の効率は格段に上がるはずだ。
ところが、これまで、この酵素の姿はよく分かっていなかった。
「The Institute of Cancer Research (英国ガン研究」の Dr Alessandro Vanniniらの研究グループは、「cry-electron microscopy(極冷凍電子顕微鏡)」を使ってRNA polymerase Ⅲの詳細な立体画像 (3D image)」とその動きを撮影することに成功した。
科学者の目の前に始めて現われた、その酵素「RNAポリメラーゼⅢ」の姿に、みな驚く。
"It was definitely a Van Gogh." [それは、まさしく印象派ゴッホの作品のようだった。]
これでようやく、酵素の正体も、そのDNA転写の具体的な方法も、実際に目で確認できた。この姿が崩れたときは、ガンが発生した証し。ガンに冒された酵素「RNAポリメラーゼⅢ」を修繕する「新たなガン治療技術開発」に向けて期待が高まる。
(写真は添付のBBC Newsから引用)