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「黄金バット」の使者コーモリ:脳が特別に進化した正義の味方! (BBC-Science & Environment, November 27, 2017)

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 西のかなたに太陽が沈むと、「夜と闇 (night and darkness)」がやって来る。これで喜ぶのは、お日さまが照っていては仕事のやりにくいドロボウと悪人。

 さて、それとは別に、日が落ちかけたころになると、自転車の荷台に商売道具一式を積んだ「いつものオジサン」が現われる。すると、そこいら中で遊んでいた子どもたちが、その自転車の周りに集まり、「黄金バット」の紙芝居が始まった。黄金バットは、常に悪党をやっつけてくれる正義の味方だった。ちょうど都合のいい具合に、黄金バットが紙芝居の中で活躍するころには、本物のコーモリが子どもたちの頭の上を飛び交った。コウモリは黄金バットの使いであり、困った人をいつも見つけてくれたのだ。

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 西洋でコーモリが「sinister (不吉)」と見なされるようになったのは、「Bram Stocker (ブラム・ストッカー[1847-1912])」が 1897年に出版した「Dracula (ドラキュラ)」からだと言われる。その本の中では、吸血鬼ドラキュラが、夜になると目を覚ましてコーモリに姿を変え、血を求めて闇を徘徊する。この作品のお陰で、忌み嫌われる悪党のコーモリのイメージが、世の中にすっかり定着してしまった。

 さて、コーモリは超音波 (30kHZ-110kHz) を発し、暗闇の中を自由に飛び回る。その「チッチッチッ...」の「sound clicks (発信音)」は、人間の耳にほとんど聞こえない。1秒間に 120回以上の音波を発しては、周囲の物体から跳ね返ってくる反響音に耳を傾け、自由自在にエサを捕まえることができる。これは「echolocation (反響定位)」として知られている。

 Johns Hopkins大学の Dr Melville Wohigemuthらの研究グループは、コーモリの脳底部「中脳蓋 (ちゅうのうがい)」に存在す「上丘 (superior colliculus)」の組織構造が、他の哺乳動物とは、まったく違っていることを発見した。上丘組織の中で、「location neurons (定位神経」と「motor neurons (運動神経)」が隣合わせに配置され、反響音で捕らえた「auditory data (聴覚データ)」を素速く解析すると、その解析結果に応じて即座に体の動きを変えることができる仕組みだ。

 コーモリが進化の過程で獲得した聴覚・運動能力は、「an incredibly successful evolutionary innovation (信じがたいほどに優れた機能進化)」だった。
 これを人は「神のなせる業(わざ)」と呼ぶだろうか。それとも、闇の仲間を増やすために捻り出した「悪魔のしわざ」というだろうか。

 なお、Dr Wohigemuthら研究結果は医学雑誌「JNeurosci」に発表された。

                   (写真は添付のBBC Newsから引用)

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