「いじめ (bullying)」をテーマにした童話と言えば、Andersen (アンデルセン) の「みにくいアヒルの子 (The ugly duckling)」。これは余りにも有名。
卵から孵(かえ)るのが一番遅れたアヒルの子。羽の毛は灰色で体も大きい。一緒に孵った他のヒナに比べて「とにかく、様子が違う」。このせいで、その「みにくいアヒルの子」はニワトリ、七面鳥、ガンなどからも、バカにされ、突っつかれたり、咬みつかれたりの、いじめ (bullying) を受ける。
しかし、学校や職場のいじめは「ニワトリのいじめ」どころではない。それは陰湿で、執拗で、巧妙。そして、結果は悲惨だ。心はズタズタに切り裂かれ、人権は否定され、人生が台無しにされて、自殺にまで追いやられることも。
さて、添付の BBC Report によると、子どもがいじめを受けると、次のような「mental health problems (心の病)」を発症するリスクが高くなる。
・anxiety :不安神経症
・depression :うつ病
・hyperactivity :注意欠陥多動性障害
・behavioural problems :行動障害
「The University College London」の Dr Jean-Baptiste Pingaultらの研究グループは、年齢が11、14、16歳の双生児11,000人の協力のもとに、「いじめのその後」を追跡調査した。
その結果、いじめが原因で発症した不安神経症は 2年間続いたが、時間が経つに連れて徐々に回復し、5年後には症状が全く消えた。
しかし、心に受けた傷は、時間が癒してくれるとは言え、一度、いじめを受けた子どもは「被害妄想 (paranoid thoughts)」に陥りやすく、考え方も軌道を外れる傾向にあることが分かった。
Dr Pingault らの研究は、いじめで受けた「mental health (心の病)」に対して、子どもには回復力があることを立証したもの。
さて、これは私見。
この研究だけでは、子どものいじめの問題は、全く解決できない。まるで、『殴られてできた打撲のアザは、時が立つと消える』ことを、大がかりな調査で明らかにしたようなものだ。学校が、形式的な取り組みでお茶を濁そうとする限り、一過性の厄介な事案として処理する限り、子どもたちは、今後も、ずっと苦しみ続ける。
未来のある大勢の「children and adolescents (青少年)」が、いじめを受けて精神的に追い詰められ、「In distress(悩み)」苦しんでいる現代社会の状況は、異常 (abnormal)だ。
職場のいじめも、これとほとんど同じ。「弱肉強食」と嘯 (うそぶ) いて、力あるいは権力を楯に、人間が人間をいじめ、回復のむづかしい「心の病」に追い詰め、職場から追い出し、ときに自殺に追いやるなど、もはや、それは「human (人間)」のすることではない。「悪魔に心を渡して、心を失った人間」の行為と言えば、言い過ぎになるだろうか。
(写真は添付のBBC Newsから引用。)