金魚 (goldfish) は「crucian carp (フナ)」の仲間。その一族の魚は「harsh environment (苛酷な環境)」を生き抜くために、独自の進化を遂げた。
北ヨーロッパでは冬になると池や湖に厚い氷が張る。しかし、たとえ池全体が凍って、水中から酸素が取れなくなっても、金魚は数ヶ月も生き延びることができる。このことは、1980年代から知られていた。
さて、Oslo 大学の Dr Cathrine Elisabeth Fagernesらの研究グループは、この金魚の「特殊な生き残り能力 (peculiar survival abilities)」の「molecular mechanism (分子的メカニズム)」を明らかにし、科学雑誌「Science Reports」に発表した。
人類を含むほとんどの脊椎動物 (vertebrates)は、酸素がないと数分で死んでしまう。それなのに、同じ脊椎動物でありながら、金魚が酸素無しで数ヶ月も持ちこたえられるのはなぜか。
その答えは、代謝機能の違いにあった。金魚は、代謝回路の切り替え可能な「2重の遺伝子セット (a duplicated set of genes)」を進化させて、生き延びていた。
一般に、脊椎動物では、炭水化物 (carbohydrates) がミトコンドリア (mitochondria) に送られ、そこで酸素を使用してエネルギーが作り出されている。酸素がないと、炭水化物は乳酸 (lactic acid) に分解されて体内に蓄積される。これでは、さすがの金魚と言えども、数分で死んでしまう。
ところが、酸素がないとき、金魚の遺伝子は、代謝回路のスイッチを切り替え、体内で発生した乳酸を「ethanol (エタノール)」に変換してしまう。これによって、金魚の血液中のアルコール濃度は、スコットランドや北ヨーロッパ諸国で採用されている「飲酒運転取締基準 (legal drink-drive limit)」の「0.05 mg/mL」まで上昇するという。なお、アルコール濃度は、それ以上、上がらないように、「gills (エラ)」から体外に放出されていることが分かった。
金魚だって、遺伝子を変えてまで生き延びて来た。人間は、脊椎動物の頂点に立っているとも言われるが、せめて喧嘩しないように、もっと進化する必要がありそうだ。
(写真は添付のBBC Newsから引用。)