パーキンソン病 (Parkinson's disease) とは、脳内神経細胞が徐々に死滅し、神経伝達物質「ドーパミン (dopamine)」が消失する病気。病気の進行 に伴って、手に震い(tremor) や歩行・運動機能障害など症状が現われ、最終的には記憶障害 (memory problems) を引き起こすこともある。
イギリスにおける患者数は、2020年までに162,000人になるものと推測されている。現在、パーキンソン病の症状 (symptoms) を和らげる薬はあるが、残念ながら、この病気の進行を遅らせるか、止める薬は開発されていない。治療法に至っては暗中模索の状態。
ところが London 大学「The University College London, UCL」の Thomas Foltynie 教授らの研究チームは、「type 2 diabetes (2型糖尿病)」の治療薬「exenatide (エキセナチド)」に、パーキンソン病の進行を妨げる働きがあることを発見した。
医学雑誌「Lancet」に発表された Foltynie 教授らの論文によると、パーキンソン病患者からランダムに抽出した60名を2グループに分け、60 週間に及ぶ臨床試験を実施し、「exenatide」の効果を確かめたという。
一方の患者グループには、「exenatide」を、別のグループには「placebo(dummy treatments)」を週1回皮下注射 (injections) で与え、手足の震え・こわばり、バランス回復能力などの運動機能に関する検査を続けた。なお、どちらのグループにも、パーキンソン病患者に対する通常の治療も実施した。
すると、臨床試験開始から 48週間後に、プラシーボグループの患者に 3.5 points の症状の悪化が認められたが、「exenatide」グループには、1 point の症状の改善があった。 結局、臨床試験が終了した 60週間後、両グループの患者には平均 3.5 points の差となった。
この差は「trivial (わずか)」ではあるが、パーキンソン病の進行が食い止められただけでも画期的だ。今後は、「multicentre trial (多施設臨床試験)」にて同様の結果が再現され、長期間にわたる「exenatide」の安全性や効果を確認する必要があるという。
一般の病院等で、パーキンソン病の治療に使用されるまでには、今少し、時間が掛かりそうだ。
なお、この一文をまとめるに当たって、以下の記事も参考にした。謝意を表したい。
[the guardian] August 4, 2017
「Diabetes drug could help those living with Parkinson's disease, research reveals」
(写真は添付のBBC Newsから引用。)