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VCM耐性菌「スーパーバグ」:これを木端微塵に破壊する抗生物質 (BBC-Health, May 30, 2017)

https://ichef-1.bbci.co.uk/news/624/cpsprodpb/11EA0/production/_96267337_b2360052-coloured_tem_of_enterococcus_faecalis-spl.jpg

 どんなに「たまご酒」を飲んでも、あるいは漢方薬に頼っても、ある種の感染症では一向に埒が明かないこともある。そんなとき、医師が処方する抗生物質(antibiotics) の効き目に驚かされる。抗生物質の登場で、これまでどれだけの人命が救われたことだろうか。
 しかし、世界中の医師が、安易にまた大量に抗生物質を処方したせいで、これに抵抗力を持った「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 MRSA」などの細菌が出現する。
 そこで、1956年「Eli Lilly and Company」が開発したのが「vancomycin( バンコマイシン、VCM)」。当時は、最強の抗生物質と、もてはやされた。

 そして 60年余りが過ぎた。いくら最強とは言え、これだけ長期にわたって同じ戦法で細菌を攻めていては、敵にも変化が現われるのも当然だ。今度は、VCM がまったく効かない「Superbugs」すなわち「vancomycin-resistant staphylococcus aureus(VCM 耐性黄色ブドウ球菌、VRSA)」や「vancomycin-resistant enterococci( VCM 耐性腸球菌、VRE)」が発生する。
 なお、VCM 耐性腸球菌は、傷感染 (wound infection)や「血流感染 (bloodstream infection)」などの恐ろしい院内感染症を引き起こすことで知られる。

 そこで、「Scripps Research Institute (スクリプス研究所)」の Dr Dale Boger らの研究チームは、「Vancomycin」の分子構造設計を見直した結果、耐性菌の殺傷力を数千倍に高めた「超強力な抗生物質 (ultra-tough antibiotic)」の開発に成功した。

 研究者らが「mechanisms」と呼ぶ、分子設計のポイントは 3点。その一つは耐性菌の防御を崩すこと。次に、これを攻撃する武器 (ways) を 2種用意することだった。
 それは、難攻不落の城を攻め落とすことに似る。まず始めに城の周りの掘りを埋め、次に弓矢、鉄砲で攻め立てる。これで耐性菌は逃げる (dodge) 手立ても防御力も失い、続く攻撃で耐性菌の細胞壁 (cell walls) は完全に破壊される。

 Dr Boger らは、今後さらに検証実験を実施した上で、5年以内には実用化に漕ぎ着けたい考えだ。なお、研究の詳細は「Proceedings of the National Academy od Science of the United States of America, PNSA」に発表された。

 さて、人類は、この耐性菌との戦(いくさ)に勝利し、病院に巣くう耐性菌を一掃できるであろうか。
                  (写真は添付のBBC Newsから引用。)

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