地球は、広大な宇宙の中にあって、色々な生命体が互いにバランスをとり、あるいは支え合いながら生きている生息環境だ。どの生物にも、それぞれが誕生した理由があり、生き抜く権利があるはず。
小麦、米、野菜、果物などは、人類が野生種から改良し、育て上げた植物。また、ある種の野草は古くから薬草 (herbs) として役立てられ、傷口を癒し、人の命さえ救って来た。しかし、植物には、まだまだ、その本当の姿、機能が知られていない部分は多い。
ところが残念なことに、地球上から完全に消えて行く種も少なくない。一度、遺伝子が失われると、現在の科学では、二度とその種の花を再現することは不可能だ。生物の世界がだんだん小さくなっているとも言える。
イギリスでは、近年の都市化に加えて、牧畜農業のあり方が変化したため、多くの植物種が絶滅の危機にさらされている。その野草が辛くも逃げ切れた場所は、なんと、「道ばたの草むら (road verges)」だった。けれども、そこさえ、安住の住みかではなくなっている。道路整備事業の一環として、定期的な刈り込みが実施されるためだ。この結果、文字通り、息も絶え絶えの状況に陥っている種も出てきた。
道路管理者に限らず、ほとんどのドライバーにとって、道路脇の草むらは「つまらない、取るに足らない場所 (dull, inconsequential places)」。せいぜいサイドミラー (wing mirror) に写っては、ただ消えてゆくだけの景色だ。
自然保護団体「Plantlife」の Dr Trevor Dines によると、
"Sadly, road verges have been woefully disregarded for decades and are increasingly poorly managed for nature."
[ 悲しいことに、道ばたの植生帯は何十年もの間、悲惨なほどに軽視され、自然保護がどんどん、おろそかになっている。]
イギリスで絶滅の危機に瀕している野草の種「top 10」は以下のとおり。
・Fen ragwort (サワギクの仲間): Cambridgshire の Ely(エーリィ) に近い幹線道路 A142 側の溝の中で生息
・Spiked rampion (スパイクト・ランピオン):森林植物の一種。現在では Sussex 中部の森林の小道を含め、8カ所でのみ生息。
・Crested cow-wheat (ママコナ属):主として、Cambridgeshire の道ばたに生息
・Tower mustard (ハタザオ属):キャベツの仲間で、生息地は約 30ヶ所。その内の半数は道ばた。
・Velvet Lady's-mantle (ヴェルヴェット・レディズ・マントル):かっては干し草用の牧草地でよく見られた小型のハーブ。
・Yarrow broomrape (ハマツボ属):道ばたの草むらに生息
・Sulphur clover (サルファー・クローバー):牧草地が減少したため、今では生息地の2/3が道ばた。
・Wood calamint (シソ科カラミント):イングランド南に浮かぶ「The Isle of Wight (ワイト島) の森林に沿った小道に生息。
・Welsh groundsel (ノボロギクの仲間):Walesの固有種 (endemic)。生息地は 19カ所で、その80%は道ばた。
・Wood bitter-vetch (カラスエンドウの仲間):かっては England、Wales の牧草地で、ごく普通にみられた野草。現在は絶滅危惧種。
なお、「Plantlife」の調査によると、道ばたの草むらに生息する植物は 724種。その内の 91種は絶滅危惧種あるいは準絶滅危惧種に分類されると言う。
(写真は添付のBBC Newsから引用。)