精錬潔 白(integrity) とは、心が澄みきった泉のように清く、私欲を捨て、決して不正を働かないこと。大学は学問を究める場であり、その目的は、清廉潔白で倫理観に溢れた人間を育てることにあるはずだ。
学生が、授業の課題レポートの作成に、「copy & paste」や翻訳ソフトを使い続け、勉学の基礎固めを怠っていると、やがて追い詰められ、心は薄汚れて、正直 (honest) も素直 (forthright)、倫理 (ethic) も失いかねない。
イギリスで公表された研究論文の不正疑惑 (allegations)は、2012 - 2015年の 4年間で約 30件。しかし、この数値は余りにも少なすぎる。
そこで、BBC が「Freedom of Information rules (情報公開法)」に基づいて、イギリスの Russell Group を構成する 24大学について調査した。Russell Group (ラッセル・グループ) 大学とは、世界最先端の研究開発に携わるイギリスのトップグループ重点モデル大学。
その結果、その著名な 24大学中 23大学で、2011 - 2016年の 6年間で 300件を越える研究の不正疑惑が報告されていることを突き止めた。盗用 (plagiarism)、捏造(fabrication)、著作権侵害 (piracy)、不正行為 (misconduct) などが確認された。この内、疑惑の論文の約 1/3は是認され、30件以上の論文が撤回されていた。
これに対して Russell Group の報道官は、次のように述べる。
"Our universities take research integrity seriously and work continuously to help staff and students maintain high standards of research."
[ 私どもの大学は研究公正を厳格に遵守し、教員・学生が高度な研究規範を維持できるように常に働きかけている。]
しかし、これは、科学に対する国民の信頼を失いかねない由々しき事態と判断され、英国下院議会科学技術委員会 (The House of Commons Science and Technology Committee)」も調査に乗り出した。
業績第一主義の風潮にあって、大学の研究者は「論文の発表数」と「研究助成金(grants) の確保」の両面から強いプレッシャーを受けていることは事実だ。過去10年間で、不正疑惑で撤回された論文数は 10倍に膨れ上がった。
データの捏造などの不正行為が多発している原因を、研究者の置かれた状況のせいだけにすることはできない。「Retraction Watch」の blog創設者の一人 Dr Ivan Oranskyが指摘するように、そそもそも大学、助成機関 (funding agencies)、監視団体 (oversight bodies) が、不正を知っていながら、これを隠して開示しない姿勢にある。
なお、BBC が調査した結果について、イギリス全大学の副総長 (vice-chancellors) を代表する団体「Universities UK」にコメントを申し込んだところ、回答は拒否されたという。
(写真は添付のBBC Newsから引用。)