Pasteurisation (低温殺菌)は、「Louis Pasteur (ルイ・パスツール [1822-1895] ) に因んで、名付けられた殺菌処理法で、結核菌 (tuberculosis bacteria) を死滅させる目的で開発されたもの。牛乳を72℃で15分間熱処理することを指す。(なお、日本では、63-66℃30分間の殺菌処理牛乳が低温殺菌牛乳として販売されている。)
この殺菌処理では、人間の健康を害しない多くの細菌が牛乳内に生き残り、牛乳本来の風味とまろやかな味が楽しめる。ただし、その保存期間は、冷蔵庫に入れても、せいぜい 10 - 15日が限度だ。とくに、一度、開封したら、できるだけ早めに使い切る必要がある。
USA、オーストラリア、ニュージーランドで販売されている牛乳のほとんどは、低温殺菌牛乳だ。
これに対して、ヨーロッパで販売されている超高温殺菌 (ultra-heat treated, UHT) 牛乳とは、140℃で 3秒間(日本では 130℃で 2 秒間)の殺菌処理を施したもの。この処理によって、牛乳の全ての細菌およびその胞子 (spores) は完全に死滅し、パック内はほぼ無菌状態 (sterile) になる。無菌ゆえに、開封しない限り、腐敗 (spoilage) も起こらない。室温 20 - 30℃で数ヶ月は保存できるという。
ただし、高温の熱を加えることによって、メイラード反応 (Mallard Reaction) が起こり、牛乳の乳漿タンパク (whey proteins) は変質している。さらに酵素 (enzyme) が分解して硫化化合物 (sulphur compounds) が形成され、一時的に腐卵臭 (eggy stench) が付く。
なお、UHT牛乳が低温殺菌牛乳よりも白っぽく見えるのは、この硫化化合物とバラバラになった乳漿タンパクが光を反射させるためだ。
また UHT牛乳からチーズをつくるのは難しい。すでに乳漿タンパクが変質し、分散しているため、なかなか「curd (凝乳)」にならないのだ。
なお、中国ではこの 4,5年、UHT牛乳の需要が、毎年 10%の伸びで急上昇しているとか。
(写真は添付News関連の [BBCーFuture, July6,2015 News]から引用。)