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古来、風邪は風が原因:アルプスのフェーンも疫病神か? (BBC-Science & Environment, March 24, 2017)

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 上古の時代、風は「志那郡比古神(シナツヒコ)」が起こすとされた。その風は邪気をはらむとも信じられ、風邪や中風の原因は風にあると考えられた。
 また、初夏から夏に掛けて奥羽山脈の西側から麓に吹きおろす風は、冷たく湿っていて、山背(やませ)と呼ばれた。山背はたびたび稲作に深刻な冷害を引き起こし、東北の農家に恐れられた。

 一方、ギリシャ神話では、風(wind)は全能の神ゼウスが引き起こすと考えられていた。
 その風が、海から内陸に向かって吹き、アルプスの分水嶺(divine)を越えて、スイスの谷に吹き下ろすとき、風はFoehn(フェーン)と呼ばれた。乾燥した暖かい風が、ときに風速150km/h (42m/s)で吹き荒れ、真冬でもフェーンの谷は20℃になった。

 アルプスの麓(ふもと)に暮らす人にとっては、フェーンは全く「頭の痛い」話。
 フェーンが吹くと気分が沈んだり、頭痛(headaches-)や関節痛(joint pain)で悩まされる人が続出する。
 そこで、BBC World Service Programの「Crowd Science (みんなの科学)」班は、風によって本当に健康が損なわれるのか、調査した。

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 スイスの薬剤師 (pharmacist) Mr Daniel Wechslerは、その時期になると、多くの人に「フェーンの関連する疑いの強い症状 (alleged Foehn-related symptoms)」が現われるので、フェーン現象と健康との関連性は高いと見る。
 
 しかし、神経学が専門で「The Swiss Headache Association (スイス頭痛協会)」会長の Dr Andreas Gantenbein の意見は違う。「フェーンを含む風が頭痛を引き起こす」という主張については、科学的な証拠 (scientific evidence) が全くないとする。

 さらに、「Switzerland's Federal Office of Meteorology, MeteoSwiss (スイス連邦気象局)」の Mr Ludwig Z'graggenは

"The historic belief that the Foehn causes headaches, combined with modern weather forecasts which warn that it is on the way, may also be a factor."
"People get headaches when they hear the Foehn in coming."
[ 頭痛はフェーンがもたらすもの、とする古くからの言い伝えに、天気予報の発するフェーン警報が重なって、頭が痛くなっていることも考えられる。]
[ フェーンがやって来ると聞いただけで、みんな頭痛になるのだ。]

 したがって、この件に関する結論は、研究者の間でも意見が分かれた。

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 これとは別に、
"When that dry warm wind blows, it sucks all the moisture out of the air, meaning the visibility is uncannily clear. On a Foehn day, the Eiger, a good 60km from the Swiss capital, Berne, looks close enough to touch."

[ その乾燥して暖かい風が吹くと、空気中の湿分は全て風に吸い取られてしまう。すると、空気が澄んで、不思議なほどに見通しがよくなる。フェーンが吹きつける日は、「Eiger (アイガー, 標高 3,970m)」はスイスの首都 Berne (ベルン) から 60 kmも離れているのに、まるで手が届きそうなくらい、近くに見える。]

 スイスのフェーンはどうやら、単なる疫病神でもなさそうだ。

                (写真は添付のBBC Newsから引用。)

www.bbc.com