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イギリスの大気汚染:どんなにひどいか、だって? (BBC-Science & Environment, March 6, 2017)

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 イギリスの大気汚染についてBBC-Blog「So I Can Breath」が調査し、「その主たる責任はどこにあるのか」、「今後、何をなすべきか」についてまとめた。

1.イギリスの大気汚染は、どれだけひどいか?
 大気汚染が、健康を阻害する主な要因の一つであることは間違いない。しかし、では、どれ位、健康を阻害しているのか、と問われると、正確に答えることは難しい。
 その理由は、汚染された空気を吸っただけで人が死ぬことはないからだ。イギリスでは、年間約 40,000人が、主に心臓病や呼吸器系疾患で健康を損ね、自らの死を早めていると推定されている。

2.メディアの見出し「約 4,000人死亡」は正確な数値か?
 4,000の数値は、大気汚染が直接の原因となって死亡した人数ではないため、そこにはどうしても「不確かさ (uncertainty)」が付きまとう。
  このため、政府顧問筋 (government advisers) から、4,000という数値は、実際よりも6倍、いや 2倍に誇張された値だとする声も上がっている。

3.大気汚染はだんだんひどくなっているのか?
 イギリス全体で見ると、大気汚染は徐々に改善の方向に向かっている(ただし工場からのアンモニアガスは除く)。しかし London のような大都市では、有害な粒子状物質(harmful particulates) や窒素酸化物 (oxides of nitrogen) NOx の汚染が慢性的に環境基準値を超える状態が続いている。

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4.今、なぜ、これほどまでに大気汚染が問題になるのか?
 理由は 2つ。政府の違法な大気汚染放置に法廷判決 (2件) が下されたこと。それに、自動車メーカーの、排出ガス試験を長年にわたってごまかしていたことが背景にある。
 なお、最近になって、データベースに基づく研究段階ながら、大気汚染と認知症(dementia) との間に関連性が指摘されている。

5.ディーゼル車が大気汚染の元凶として非難される。それってフェア?
 この質問に対する答えは「Yes」でもあり「No」でもある。
 ディーゼル車を製造した自動車会社が排ガス試験をごまかして、社会の反発を招いたのも、ディーゼル車がガソリン車よりも環境を汚染するのは事実。また、都市の大気汚染の主たる原因は、道路を走る車にあることも間違いない。

 しかし、Londonの中でも「Great London」地区に限ると、自家用ディーゼル車から排出される NOx量の比率は全体の 10%。これは大型トラック (lorries) から排出されるNOx 量とほぼ同程度。意外と少ない。「Central London」地区になると、その比率はさらに下がり5%。一方、家庭・オフィスの暖房器具から排出される NOx量の比率は38%。
 加えて、大気汚染物質はバス、タクシー、工場からも排出されるため、大気汚染問題は「many-sided problem (多面的な問題)」となっている。

6.それでは、今、何をすべきか?
 さし当たって、費用対効果が最も期待されるのは、街中を走る旧式のバス、大型トラックを環境対策車に変えること。すでに多くの大都市でその取り組みが始まってはいるが、思うように進んでいないのが現状だ。
 さらに、一般家庭には石油、ガソリンの消費削減やフロンガスの回収などを依頼し、薪ストーブの使用を禁止することや、船舶からの NOx 排出を規制することなども考えられる。しかし、いずれの策にしろ、それによって得られる削減量は微々たるものに違いない。

7.ディーゼル車にもっと課税をしてはどうか?
 ディーゼル車がガソリン車よりも大気汚染物質を撒き散らしているのであれば、これにもっと課税するのはごく当然のこと、と科学者は主張する。
 しかし、政治家 (politicians) は、ドライバー (国民) を怒らせるようなことに対して、慎重にならざるを得ない。
  先の政府には、温室効果ガスの削減に効果があるとして、国民にデーゼル車の購入を勧めた経緯がある。このため、一部の団体からは、ディーゼル車を廃車してガソリン車に切り替える代わりに、1 台につき £3,500 (約49万円) の奨励金 (incentive) を払うべきだとの声も上がっている。
  
 これには「Green part (緑の党)」も一言ある。

"The Green party said it would be perverse to reward car makers with increased sales when they caused the problem in the first place by failing on their promise to government to make diesel engine clean."

[ ディーゼル車が環境に優しいと、始めに政府に嘘をついて問題を引き起こしたのは自動車会社だ。その自動車会社に、今度は、車の販売数を増やして利益を上げさせてやるなどとは、やることが邪悪だ。
                                  (写真は添付のBBC Newsから引用。)

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