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目の届かない地下はグチャグチャ!:フラッキング石油採掘 (BBC-Science & Environment, February 21, 2017)

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 原油 (petroleum) や天然ガス (natural gas) は、地下数千メートルの緻密な頁岩 (shale)層に含まれることが多い。数十年前、このような地層に、主として水、砂、化学物質から成る混合体を高圧で送り込んで、瞬時に周囲を破砕し、原油やガスが通りやすいように無数の亀裂を作る方法が開発された。
 爆薬こそ使用しないが、その作業は地中を衝撃波で破砕する発破 (explosion) だ。これは「fracking(フラッキング)」あるいは「hydraulic fracturing(水圧破砕法)」と呼ばれる。
 作業時には、ドンドンと地響きがとどろき、掘削井 (wellbore) から半径数百mに及ぶ地域にわたって地下深い地層はグチャグチャになる。

 この石油掘削技術の開発により、それまで未利用資源とされた貯留層から一挙にシェールガス・オイルが生産され、石油会社は巨万の利益を上げた。それは、これまでとは、全く違う石油開発であったため、USAでは250万人の雇用「frac job」を生み出したとも言われる。
 日本国内でも、この数年、試行的に繰り返されている石油・天然ガス回収法だ。

 しかし、「fracturing (破砕)」の示すとおり、この技術の本質は地下深部の地層を粉々、グチャグチャにすることにある。亀裂・ヒビが数本入っただけでは意味がないのだ。
  作業を進める石油業界にとって都合のいいことに、地下は人目に付くことはない。それに、たとえ地下水脈が壊されたり、化学物質に汚染されても、責任逃れはいくらでもでっち上げることができる。一般にこの種の環境破壊、地下汚染の検証は極めて難しいからだ。

 では、一般市民に十分説明されない、この「fracking (フラッキング)」の実態はどうなのか。
 「The US Environment Protection Agency, EPA (アメリカ合衆国環境保護庁)」は曲がりなりにも、2006年から2012年にかけてNorth Dakota, Pennsylvania, Colorado, New Mexicoの 4 州に限って「oil and gas spills(原油・ガス漏れ)」事故を調査し、7年間で457件の油井 (ゆせい) 漏れがあったと発表した。
 しかし、この事故件数の値は、あくまで水圧破砕作業中 (数日~数週間) に発生した事故に限定したもの。

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 Duke 大学の Dr Lauren Patterson らが、EPAの調査と同じ4州について、2005年~2014年の 10年間における原油・ガスの貯蔵、輸送中の漏れ事故を含めて調査したところ、EPAが公表した漏れ事故件数の 14倍以上にのぼる 6,648件が確認された。 
 その内 4,453件 (全体の67%) は North Dakota に集中していた。最大10万リットル(ドラム缶 [200L] にして500本分) が漏れ出でる事故も明るみに出た。

 それでも石油業界は反駁 (はんばく dispute) する。環境汚染の事故は「very few (極めてまれ)」と。
 根底に隠した本音は、「疑いがあるなら、地下にもぐって証拠を示せ」であろうか。

 なお、Dr Patterson らの詳細な調査研究内容は、「Environmental Science & Technologyに発表された。
                                (写真は添付のBBC Newsから引用。)

www.bbc.com