5,300年前の人類は何を着ていたか:アイスマンのDNA分析 (BBC-Science & Environment, August 18, 2016)
「エッツィ・アイスマン (Oetzi the Iceman)」は、1991年、アルプス山脈イタリア側のエッツィ峡谷氷河で発見された。毛皮の上着に、毛皮の帽子をかぶり、手には銅の刃先の付いた斧を持っていた。その肩には「フリントの矢じり (flint arrowhead)」が刺さっていたため、どうやら、アルプスの峡谷で争いがあり、敵から受けた矢傷がもとで亡くなったと考えられている。
エッツィ・アイスマンが生きた 5,300年前とは、人類の「Copper Age (銅器時代)」。ヨーロッパで、石器の他に金属の銅が使われた頃に当たる。
Ireland (アイルランド) の「UCD 大学 (University College of Dublin)」Niall O'Sullivan氏らの研究グループは、アイスマンが身につけた毛皮類が、どの動物のものか、「ミトコンドリア DNA ( mitochondrial DNA)」分析によって明らかにし、その詳細を Scientific Reports に発表した。
O'Sullivan 氏らの研究によると、毛皮の材料は野生動物と家畜 (domestic animals) から調達し、次のように、用途に応じて毛皮の種類を使い分けていることがわかった。
・leggings made from goat skin (脚絆:山羊の毛皮)
・a shoelace of cow leather (靴紐:牛革)
・a sheep leather loincloth (腰当て:ヒツジの革)
・a quiver made of roe deer (矢筒:ノロジカの毛皮)
・a fur hat, with straps, made from brown bear(革紐付きの帽子:ヒグマの毛皮)
"But Oetz's motley wardrobe, including a coat made from at least four separate goat and sheep, could also suggest a more haphazard and desperate approach - stitching together whatever scraps of skin were available."
[ 一方、エッツィ・アイスマンの着ていた上着は、少なくとも4枚の山羊とヒツジの毛皮から作られていることから、その雑多な身じたくの品は、場当たり的ながら必死になって制作されたものであることが、うかがい知れる。手に入るどんな毛皮の切れ端でも、これを縫い合わせて使ったようだ。]
アイスマンは、5,300年前の工芸品を後世に残した。そのレベルの高さに驚く。しかし、もっと驚くのは、毛皮を着ているとは言え、たったこれだけの装備で、アルプス山脈を駆け抜けていたことだ。寒さに対する抵抗力が、現代人とは違っていたのであろうか。
(写真は添付のBBC Newsから引用。)