ウイルスの襲撃は朝だ!:その巧妙な手口 (BBC-Health, August 16, 2016)
ウイルス (viruses) はどのようにして人の体内に侵入し、細胞内で増殖してしまうのか。その巧妙な手口が、Cambridge大学の Dr Rachel Edgar らの研究によって明らかにされた。
人の遺伝子は約 22,000種。その約 10%の遺伝子の指令で、人の体は正常に機能している。中でも重要な役割を担うのは、Bmail 1 と呼ばれる「clock gene (時計遺伝子)」だ。これは、体内時計 (inertial body clock) のリズムをつくり出している遺伝子の 1つ。ただし、Bmail 1 は早起きが苦手。午後になってようやく、その活動を活発化させる。
一方のウイルスは人の体に侵入するタイミング (right time) をねらっている。午後になっては、Bmail 1 の活動が激しく、襲撃は無理だ。そこでウイルスは、Bmail 1 がまだ寝ぼけまなこの朝の攻撃に全てを懸ける。すなわち、朝駆けで体内への侵入を図るのだ。
また、「夜勤交代 (shift-work)」や「時差ぼけ (jet lag)」で体内時計が混乱しているときも、ウイルスに感染しやすい (susceptible) ことが分かった。
"viruses - unlike bacteria or parasites - are completely dependent on hijacking the machinery inside cells in order to replicate."
[ ウイルスは、バクテリアや寄生虫と違って、細胞内でウイルス自体を複製して増殖するためには、(Bmail 1 の監視をすり抜けて) 細胞組織の機構をハイジャックすることが必須となる。]
ウイルスは抜け目がない。Bmail 1 の活動が鈍る冬も、攻撃のチャンスとねらっている。真冬にインフルエンザ・ウイルスの (flu viruses) の感染症 (pandemics) が広がるのも、これで合点 (がてん) がいく。
Dr Edgar らは、マウス (mice) に RNA 型の influenza virus と DNA 型の herpes virusを感染させる動物実験で、ウイルス感染の時間特性を確認した。なんと、午前中と午後では、ウイルス感染の確率が 10倍違う結果となったという。
この研究結果を適用すると、朝の通勤電車は、勤め帰りの電車に比べて10倍危険ということになる。くれぐれもご注意を。
なお、研究内容の詳細は、米国科学アカデミー (The National Academy of Science of United States of America) の機関誌「PNAS」に掲載された。
(写真は添付のBBC Newsから引用。)