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抗生物質が効かない耐性菌:新戦略で打ち破れ! (BBC-Health, July 28, 2016)

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 ペニシリン (Penicillin)は、イギリスの細菌学者 Alexander Fleming (1881-1995)が1928年、青カビから世界で初めて発見した「抗生物質 (antibiotics)」だ。発見から実用化されるまで 10 数年を要したが、ペニシリンでどれほどの人間が救われたか知れない。
 
 しかし、細菌もやられっぱなしではいない。すぐに、耐性菌 (resistant strains) が出現する。このため、次の抗生物質メチシリン (Metthicillin) が開発される。ところが、細菌は、これにもすぐに対抗して、superbug strain (スーパーバグ株菌) の「MRSA (メチシリン耐性ブドウ球菌)」[Methicillin-Resistant Straphlococcus aureus] をつくり出す。
 まさに細菌と人間との戦いが繰り広げられてきたのだ。

 今では、およそ 3 人に 1人の鼻の中に、抗生物質の効かない「Straphlococcus aureus (黄色ブドウ球菌)」が棲み着いているという。

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 その鼻の中を「光顕レベル (microscopic level)」で探ると、1,000 種以上の細菌は細菌同士で、自らの生存に必要な「space & nutrients (居場所と栄養源)」を確保するため、熾烈な戦いをしていた。つまり、屈強な MRSA に対して互角に戦う、細菌の戦士が、人間の体の中にいたのだ。細菌の名は「Staphlococcus lugdunensis (病原性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)」。
 ドイツ Tubingen (テュービンゲン) 大学の Dr Bernhard Krismer らの研究チームは、これを発見し、一連の研究結果を科学雑誌「Nature」に発表した。

 さらに、Dr Krismer らは、その S. lugdunensis から「遺伝子組み換え (genetically modified)」の細菌株 (strains) をつくり出し、MRSA と戦う戦士の強さの秘密となっている「遺伝子コード (genetic code)」を解析した。そして、ついに、抗生物質の生成に欠かせない重要な遺伝子 (crucial gene) を突き止める。新たな抗生物質が確認されたのだ。Dr Krismer らは、これを「lugdunin」と名付けた。

 早速、新薬「lugdunin」を、MRSA に感染したマウスに使ったところ、MRSA は完璧に駆逐されたという。
 これまで、抗生物質の多くは、「土壌菌 (soil bacteria)」の中から発見されてきたが、体内に棲み着く細菌の敵を、体内の「human microbiota (ヒト微生物叢)」から探す今回の方法は、MRSA 治療薬の新たな発見につながるものとして、大いに期待されている。

                  (写真は添付のBBC Newsから引用。)

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