なぜ、正常な細胞が突然変異によってガン細胞に変わるのか。1931年にノーベル生理学・医学賞を受賞した Otto Heinrich Warburug (1883-1970) は、この難題に取り組み、1955年、1 つの仮説を発表する。
何らかの原因で酸素呼吸不足に陥った細胞が、そのエネルギー源を発酵に求めることにあると。これは「Wardurg effect (ワールブルグ効果)」として知られている現象だ。
それでは、ガン細胞のエネルギー源を酸素呼吸に変えると、正常に戻るのか。
「The American Society of Clinical Oncology conference (アメリカ臨床腫瘍学会)」で発表された、米国バイオテクノロジー会社「Berg」所属 Dr Niven Narain らの研究が、注目を集めている。Dr Narain らは、これまでに発表された細胞生物工学に関する膨大な測定データを、できる限り「supercomputer」に入力し、一旦、ガン化した細胞を元の正常な細胞に戻す方法を探った。
"Spotting every difference between a cancerous and a healthy cell is beyond even the brightest human minds."
[ ガン細胞と正常な細胞の違いの全てを明確に示すことは、どんなに並外れた才能を有する人にとっても至難のわざだ。]
現在、医療の分野でも、スーパーコンピュータすなわち「artificial intelligence (人工知能)」の活用が迫られている。
その人工知能が作り出した新薬が BPM31510。ガン細胞を正常な細胞に変える薬だ。 第1回の臨床試験は、主として、その新薬の「毒性 (toxicity)」をチェックするために実施されたが、被験者 85 名のガン腫瘍の治療に効果が認められ、ガン腫瘍が 1/4 (25%)まで縮小した患者もいた。
「Cancer Research UK (英国ガン研究所)」の Dr Alan Worsley は次のように述べる。
"We still don't fully understand how cancer cells get the energy they need to grow or how this differs from normal cells."
[ 我々は、増殖に必要なエネルギーをガン細胞がどのように確保しているのか、また、ガン細胞は、正常な細胞とどのように違うのか、未だ十分に理解していない。]
人工知能に期待する声が高まっている。果たして、Supercomputer は正確な答を示せるだろうか。
(写真は添付のBBC Newsから引用)