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殺し屋を抱き込む「悪魔ガン」:ゲノム操作で叩きつぶせ (BBC-Health, April 15, 2016)

http://ichef-1.bbci.co.uk/news/872/cpsprodpb/50EA/production/_89241702_c0288779-cancer_cell_and_t_lymphocytes,_sem-spl.jpg

 手ごわい相手と戦い、守る城は敵にすっかり包囲された。さて、どうすれば良いか。
 潔 (いさぎよ) く、城の外に打って出るのも策の一つだが、多くの仲間の犠牲は必定。それよりも、ここは、「和睦(わぼく、handshake)」に持ち込むか、あれやこれやの手練手管で敵を「懐柔 (placation)」し、味方の側に抱き込んで、その勢力を「骨抜き(disable)」にするのも戦略 (strategy) というもの。

 これは戦国時代の武将の知恵ではない。殺し屋「キラーT細胞 (killer T cells)」に追い込まれた、ガン細胞が、その生き残りを懸けて、懸命に考え出した策だった。その、ガン細胞との「和睦」の証(あか)しが、免疫レセプター「PR-1」だ。これがキラー T 細胞の中に現われると、ガンに対する攻撃は中断され、ガンは食い殺される心配がなくなる。

 これまで、この「和睦」のシンボル PD-1 を破壊するために、「ペンブロリズマム(pembrolizumab)」や「ニボルマブ (nivolumab)」などの「阻害剤 (inhibitors)」が、ガン患者に投与されてて来た。しかし、これらの PD-1 阻害剤は、体の免疫システム全体に働くため、強い「副作用 (side-effects)」が発現し、多くの患者は途中で、この免疫療法(immunotherapy) を断念せざるを得なかったという。
 
 ロンドン大学 (University College London, UCL) の Dr Sergio Quezada らは、最先端(cutting edge) の「ゲノム編集テクノロジー (gene editing technology)」を駆使し、ガン腫瘍と手を組んだキラーT細胞を摘出した後、その DNA を変えて、PD-1 を排除するという、画期的な離れ技をやってのけた。そのキラー T 細胞を戻してやると、再び、ガン(cancer) を食い殺して死滅させることに専念するようになった。

 実験は、黒色腫 (melanoma)、線維肉腫 (fibrosarcoma) に罹ったマウスを使って行なわれ、治療 60 日後のマウスの生存率を 20% 以下から 70% 以上に上げることに成功した。

 Dr Quezada らの方法によると、治療のターゲットをガン細胞のみに集中させることができるため、阻害剤の副作用が抑えられるという。研究成果の詳細は、医学雑誌「Cancer Research」に発表された。

 これはガンに苦しめられている多くの人にとって、朗報だ。一刻でも早く、次の臨床試験に進むことを願いたい。


                                                      (写真は添付のBBC Newsから引用)

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