ビタミンD:秘められた「びっくり仰天」の魔力 (BBC-Health, April 4, 2016)
ビタミンDが不足すると、「骨粗しょう症(osteoporosis)」や「くる病(rickets)」の発症リスクが高まる。通常は日光浴で十分な量のビタミンDがとれているが、イワシ、サンマにサバ、マグロやサケなどの「油っこい魚(oily fish)」や卵を食べると、ほぼ完璧に補給される。
"Vitamin D is vital for healthy bones and teeth and may have important health benefits throughout the body but many people are deficient."
[ ビタミンDは健康な骨や歯をつくるのに欠かせない。そればかりか体内の色々な臓器で重要な働きをしている。それなのに、イギリスではビタミンD不足の人が結構多い。]
高齢者は、とくに注意が必要だ。外出する機会が少ない上、日光を浴びても、ビタミンDを生成する皮膚の機能が衰えているからだ。
さて、「The Leeds Teaching Hospitals」の研究チームは「心不全 (heart failure)」の患者 163 人を A、B の 2 グループに分け、A グループにはビタミン D 含有量 100 ㎍ のサプリメントを毎日服用してもらい、その効果を確認する臨床試験 (clinical trial) を 1年間実施した。
もちろん、B グループには、「砂糖入りの偽薬 (placebo)」がそれとなく渡された。
心不全は、心臓の収縮機能が低下し、血液を十分に送れなくなる病気だ。その機能レベルの指標として「駆出率 (くしゅつりつ) [ Ejection Fraction, EF ]」が知られている。これは、一回の心拍で左心室から送り出される血液の量を、左心室の容積との比率で表わした値。健康な成人の駆出率FEは 60 ~70%、しかし、心不全患者ではそれが 25% 程度に低下する。
臨床試験の結果は明白。ビタミン D のサプリメントを服用した A グループの患者の駆出率EF値は、1 年後に 34 %まで回復していた。さらに、心臓のサイズも小さくなっていた。このことは、心臓がビタミン D の作用を受けて、より強靱で効率の良い臓器に変わったことを意味する。
研究者らは、このビタミン D の効果に「びっくり仰天 (stunning)」。
ただし、現段階で、「薬物療法 (medical therapy)」として高用量 (high-dose) のビタミン D を処方するのは時期尚早。今後、長期にわたる大規模な臨床試験が必要とされるそうだ。
(写真は添付のBBC Newsから引用)