癌(ガン)は化け物:そのアキレス腱を刺す免疫療法 (BBC-Health, March 4, 2016)
DNA の遺伝子情報の誤りが原因で、細胞が突然変異を起こすと、その増殖が暴走する。これが癌 (ガン) だ。樹には幹(みき)があるように、ガン腫瘍 (tumour) にも幹があり、そこから枝分かれするように、ガンはあらゆる方向に広がって行く。この結果、ガン疾患者には、特有の「ガン異方性 (cancer heterogeneity)」が存在することになる。
さらに、厄介なことに、ガンはその姿を次々と変身させ、進化させる。
ガン細胞 (cancer cells) の表面には、「抗原 (antigens)」と呼ばれる、タンパク質の角 (つの) が沢山突き出ている。その角の形こそ、免疫システムのキラー T 細胞が敵と判断する目印だ。
ところが、ガンの「主幹腫瘍 (trunk mutations)」は、己の細胞自体を刻々と進化させて、その抗原の形を変えてしまう。これでは、免疫システムに見つからないようにと、煙幕 (smokescreens) を張って逃げ続けるようなもの。ガンの親分格がなかなか捕まらず、ガンのシンジケート (syndicate) が根治できない理由がここにある。
変身を繰り返し、逃げ隠れするガンの主幹腫瘍。ここはガンの「アキレス腱(Achilles heel)」でもある。これを確実に探し出して、治療する「免疫療法(immunotherapy)」が、「UCL (University College London)」の「ガン研究所(Cancer Institute)」に所属する Charles Swanson 教授を中心とする国際研究チームによって開発され、科学雑誌「Science」に発表された。
この治療法によると、ガン治療は 2 段階で行なわれる。
まず、免疫システムをガンの主幹腫瘍に誘導するために、患者ごとに「ガンワクチン (cancer vaccines)」を設計し、これを投与する。
次に、攻撃を始めた免疫シルテムを体外に取り出し、これを実験室で培養し、数を増やした後、再度、患者の体内に戻してやる。
研究チームは、今後 2年以内で、臨床試験の実施に踏み切りたいと意欲を燃やす。
ただ、残念なことが一つある。この,「患者ごとに設計する治療(tailor treatment)」は、どうしても、治療費が膨大になること。
(写真は添付のBBC Newsから引用)