ヒロシのWorld NEWS

世界のニュースを日本語でお届け!

ヘンゼルとグレーテルの森はいずこに (BBC-Science & Environment, February 5, 2016)

http://ichef-1.bbci.co.uk/news/768/cpsprodpb/729C/production/_88104392_b6010524-oak_tree_at_sunrise-spl.jpg

 グリム童話の「Hensel und Gretel (ヘンゼルとグレーテル)」は、ドイツの深い森が舞台だ。
 『昔むかし、貧しい木こり (woodcutter) が、森の外れに住んでいました (lived on the edge of a large forest)。』の書き出しで始まる。
 毎日の食事に事欠く有様に、思い余った父親が 2 人の子どもを森に連れだして、捨てようとする。このとき、機転を利かして、ヘンゼルは、帰りの道を見失わないようにとパンくずを落として行くが、森の小鳥に、みな食べられてしまい、深い森に迷い込んでしまう。日本でもよく知られたドイツの昔話だ。

 この昔話では、昔むかしの、古いドイツの森の様子が語られている。
 小鳥が飛び交う森とは、少なくともそこには「広葉樹 (broadleaved species)」が生えた天然林 (native forest) を意味する。ところが、現在のヨーロッパの森の 85% は植林 (afforestation)  された「針葉樹 (conifers)」が占める。18 世紀に広葉樹のオーク (oak) や ブナ(beech)、カバ (birch) などの大木のほとんどが切り倒されてしまったのだ。ドイツの森も、今は鬱そうとして暗い。

 イギリスで産業革命が始まったのは 1760 年。その変革の波はイギリス一国だけに留まらず、またたく間にヨーロッパ全土に広まった。そして産業の構造、エネルギー消費、インフラはもちろんのこと、社会構造や人間の考え方まで変えてしまう。
 この社会変化の中で、森の木も「尊厳」、「霊力・魔力」、「神通力」を次と次と失い、人々はこぞって伐採を始める。こうして 1750-1850 年の100年間で、オーストリアの国土面積の 2 倍以上に相当する 190,000 km2 の森が消えた。
 しかし、
"Ironically the greater use of fossile fuesls, particularly coal, slowed timber rush, and from 1850 to the present day, Europe's forests grew by some 386,000 sq km and now cover 10% more land than before the industrial revolution."

[ 皮肉なことに、産業革命以降、急激に使用されるようになった化石燃料、とくに石炭のお陰で、薪の需要が低下する。現在のヨーロッパの森林面積は 386,000 km2。森は数値の上では、産業革命以前に比べて 10% も増えているのだ。]

 さらに、「森は CO2 を吸収し、地球温暖化防止に役立つ」との謳(うた)い文句のもとに、植林が奨励されたことも、プラスに働いた要因だ。ただし、そこには「落とし穴(pitfalls)」があった。
"planting faster glowing, more commercially valuable trees such as Scots pine and Norway spruce."
[ 成長が早く、木材として高く売れるスコッチパインやドイツトウヒなどの針葉樹が盛んに植えられたのだ。」

 もちろん、当時の有力者の心を「儲け主義」が支配し、「Forestr y (林学)」と称する「scientific approach」が、これを誘導した。

 しかし、フランスの「Laboratoire des Sciences du Climat et de l' Environnement (気候環境科学研究所)」の Dr Kim Naudts らの研究チームは、ヨーロッパの過去 250 年間における森の保守管理の歴史をひもといて調査し、針葉樹の森は、決して、地球の温暖化防止に寄与していないことを明らかにした。詳細な研究結果は「Science」の最新号に発表されている。
  
"Choosing conifers over broadleaved varieties also had significant impacts on the albedo - the amount of solar radiation reflected back into space."

[ (17 世紀まで保たれていた森の)多種多様な広葉樹に代わって針葉樹を植林し、アルベドすなわち、地球が太陽光を宇宙に跳ね返す割合に重大な影響を与えてしまったのだ。]

"Due to the shift to conifer species, there was a warming over Europe of almost 0.12 degrees and that is caused because the conifers are darker and absorb more solar radiation."

[ 針葉樹の森は、広葉樹の森に比べて暗く、太陽の光をより多く吸収してしまう。広葉樹が伐採されて針葉樹の森に変えられたせいで、ヨーロッパの気温は、ほぼ 0.12℃も上昇してしまった。]

 近年の地球温暖化の原因が、化石燃料の燃やし過ぎにあることは事実だ。しかし、その温暖化の 6% は、森林政策の失敗にも責任があるとされる。
  
                                 (写真は添付のBBC Newsから引用)

www.bbc.com