気に入った料理をレストランで堪能する一時は、何とも贅沢な時間だ。新鮮な食材が洗練されたコックの妙技で調理され、洒落た食器に添えられてテーブルに運ばれる。店の中は、適度な照明に上品な音楽が流れ、隣には親しい友人か家族が座る。
食道楽という言葉があるが、何も豪勢な食事を求めたり、珍品にこだわる必要はあるまい。本当に美味しいものを、少しだけでも、居心地良く楽しみたいだけだ。
しかし、実は、これがなかなか難しい。
誰もが、レストランに入る前にチェックする項目は、料理の品、店内の雰囲気に値段、それに評判。店の舞台裏すなわち調理場など、ほとんど気にしない。店にとってもブラックボックスだ。
さて、イギリス Walesで は、2013 年、全てのレストランに、当局が査定した「衛生評価 (Food Hygiene Ratings)」を表示することが、法律によって義務 (compulsory) 付けられた。これに対して、England では、今でもその「スティッカー (stickers)」の表示は任意 (voluntary) だ。
当局の検査官 (inspectors) が、England 中央部に位置する都市「Leicester(レスター)」のレストランを調査したところ、中には、ハツカネズミ (mouse) やクマネズミ (rat) が鍋に入ったり、不潔な食器に、床は汚れ、調理台の上はカビだらけの店もあることがわかった。この事実は、BBC のドキュメンタリーTV 番組「Inside Out」で報道された。
検査官によると、このような不潔で衛生管理の悪いレストランは、店の窓にも店内にも衛生評価のスティッカーを表示していなかったという。
なお、イギリス全土のレストランの衛生評価は、0 から 5 までの 6 段階で表示され、ネット (online) で誰でも確認できる。もちろん、最高評価は 5。
「英国食品基準局 (The Food Standard Agency, FSA)」は、以下の調査結果を公表している。
Food hygiene ratings English businesses
score 5 229,479 (61.3 %)
score 4 78,040 (20.8 %)
score 3 41,343 (11.0 %)
score 2 10,728 ( 2.9 %)
score 1 13,183 ( 3.5 %)
score 0 1,527 ( 0.4 %)
この資料によると、イギリスのレストランの 20 %弱すなわち、およそ 5 件に 1 件は衛生に問題ありの評価 3 以下に相当する。結構、不潔だ。検査官の1人の Mr Andrew Wood は次のように述べる。
"Members of public are not always able to check the ratings online so in a way they are going into these places blind."
[ 多くの人にとって、いつでもレストランの衛生評価をオンラインでチェックできるとは限らない。だから、よく分からないで、つい、衛生状態の悪い店に入ってしまうのだ。]
これに対して、Leicester 市当局の「食品安全チーム主任 (Food Safety Team manager)」Mr David Barclay Rhodes は、反論する。
"At the moment, I can walk along any streets in England and see stickers with five, four and three ratings which mean they are satisfactory or better, but I never see the bad ones."
[ 現在のところ、私がイングランドのいたるところの街を歩き回り、見た限りでは、どのレストランも評価が 5 か 4 または 3 のスティッカーを掲げていたよ。どれもみな「十分に満足」あるいは「良好」のランクだった。衛生不良の店なんて見たことないね。]
なるほど、「bad ones」とは、Leicester のレストランとは限らないようだ。このような状態を放っておいて、一体、誰が得をしているのだろう。
(写真は添付のBBC Newsから引用)