「酸素 (oxygen)」がないと、物は燃えないし、呼吸もできない。水素エネルギーも役に立たない。日本語で「酸の素」と書くのも、考えてみれば不思議だ。
しかし、その理由は、英語の「oxygen」にある。この語は、ギリシャ語で「酸」を意味する「oxus」と、名詞に連結して「発生させるもの」を表わす「-gen」から成り立つ。この元素が発見された当初、「酸の形成に必要不可欠なもの」と考えられていた。このため、フランスの化学者 A. L. Lavoisier(ラヴォアジェ)が、1777年、oxygenに命名したとされる。
酸素は、温度-270℃ (絶対温度3K)の宇宙空間で、青みがかった固体として存在するはずだ。
ところが、欧州宇宙機関 (ESA)の「探査機 Rosetta (ロゼッタ)」に搭載された「Rosina instruments (ロジーナ計測器)」が、すい星「Comet 67P/ Churyumov-Gerasimenko」の大気で「遊離酸素 (free oxygen)」を捉えた。すでに、Comet 67Pを取り巻くガス体には、水蒸気 (water vapour)、一酸化炭素 (carbon monoxide)、二酸化炭素(carbon dioxide)の存在が知られていたが、酸素が確認されたのは、初めて。
酸素は反応性の強い元素で、すぐに他の元素と結びついて化合物を形成する。それが単独で遊離する酸素O2の状態で発見されたことに、科学者は驚く。
"The researchers suggest that oxygen must have been frozen very quickly and became trapped in clumps of material early on in the formation of the Solar System."
[ おそらく、太陽系形成の初期段階で、酸素が急速に凍結し、宇宙に漂う塵の塊に閉じ込められたに違いないと見る。]
しかし、これまでの太陽系形成理論によると、その誕生時に、無数の塵の塊(微惑星)が激しく衝突、合体を繰り返し、「惑星」や「すい星」が形成されていったと説明される。この説によると、衝突時に発生する高温で、凍結した酸素は気体になり、他の元素と反応してしまうため、遊離酸素の存在と矛盾する。
したがって、太陽系の形成は、「極めて緩慢に進んだ」と考えるのが妥当だ。これまでの理論では、酸素O2が小さな粒状 (icy grains)に固まって、約46億年間も、宇宙に「原始の物質 (pristine material)」の状態で残存できたことを説明できない。
なお、塵と氷の塊りであるComet 67Pの大部分が、太陽系誕生の際に形成されたことは、科学的な証拠で確認されているという。
なお、「地球上の生命誕生」と「すい星 (comets)」との関わりについては、
・Comet 67Pで発見された水は、地球の水とはまったく違うもの。したがって、地球の水は、すい星が運んだ水とする説は疑わしい。
・Comet 67pでは多様な「有機分子 (organic molecules)」が発見された。この発見は、すい星が、地球に生命誕生の切っ掛けを作ったとする説の裏付けとなるもの。
(写真は添付のBBC Newsから引用)