春は、寝坊しやすい。「春眠暁を覚えず」とは、過ごしやすい春の季節に、思わずぐっすりと眠ってしまった中国の唐の詩人、孟 浩然が詠った一節。また、春には、一斉に草木が芽吹き、小鳥も巣作りに俄然と忙しくなる。
さらに、秋になると、人は、スポーツの秋、旅行の秋などと称して、いそいそ、そわそわと動き出す。
なぜ、生物は季節によって、その挙動、振る舞いがこうも影響されてしまうのか。この疑問に答える研究が「Current Biology」に発表された。
Manchester大学とEdinburgh大学の研究チームが、ヒツジの脳細胞を分析し、生物の体内には、「1日(24時間)周期(daily rhythm)」、「1年周期(circannual rhythm)」を感じる時計(clock)の他に、季節周期の「カレンダー時計(chemical calendar)」も存在することを発見した。
生物、とくに「脊椎動物(vertebrates)」は、これらの3種の体内時計を上手に使い、「移動(migrations)」、「冬眠(hibernations)」、「繁殖(breeding)」、「出産(delivery)」を営んでいるのだという。
さて、脳の基底部には「脳下垂体(pituitary gland)」が存在し、ここから体内諸器官の働きをコントロールするホルモン(hormones)が分泌されている。ここに、「カレンダー時計」として機能する神経細胞群が見つかった。その細胞の数は、何と17,000個。そして細胞はコンピュータの演算システムと同じ「2進法(binary system)」で変わる。すなわち、冬になると、その全ての神経細胞が「冬の化学物質(winter chemicals)」を生成し、夏になると「夏の化学物質(summer chemicals)」を生成する。
この神経細胞のシグナルが、体に夏、冬、そしてその中間の春、秋の季節変化を知らせ、季節に対応した最適な「モード(mode)」の準備を促しているという。
たとえば、人間は、冬になると、ごく自然に、「免疫システム(immune system)」を活発化させて、ウイルスに対する抵抗力を高めている。これも、季節カレンダー時計が体内に組み込まれているお陰だそうだ。
(写真は添付のBBC Newsから引用)