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プロレスラー:早死するのはなぜ? (BBC-Magazine, August 8, 2015)

http://ichef.bbci.co.uk/news/736/cpsprodpb/15A81/production/_84750788_piper_jericho2_getty.jpg

 テレビ中継の「プロレス」は八百長のかたまりだ。そこには八百長の怒鳴り合い、殴り合い、そして、血を見るケンカがある。つまり、国会でおなじみの、大人げないケンカ等を、少々大げさ、派手に、スケールを拡大したドタバタ劇として、観客に見せてくれているのだ。そこで皆、拍手を送る。いやな奴を自分に代わって、リングの上でコテンパンにやっつけてくれるレスラーに。

 いずれにしても、プロレスには、はじめから見え見えの八百長とわかっていても、見る人を引きつけるものがある。それは格闘技でもなければ、スポーツでもない。むしろ演技だ。

 その、プロレスラーにMr Perfect(ミスター・パーフェクト)、The Ultimate Warrior(究極の戦士)、"Rowdy" Roddy Piper(ケンカ士 ロディ・パイパー)の名前が挙がる。いずれも、かってプロレス界のスーパースターと呼ばれた男達だ。

 しかし、Mr Perfectは2003年、41歳で急性コカイン中毒(acute cocaine intoxication)のため世を去る。また、無敵の異名をとるThe Ultimate Warriorも、昨年心臓発作(heart attack)で死亡する。54歳であった。さらに、今年2015年7月31日には、61歳の"Rowdy"も心臓発作で他界する。
 なぜ、プロレスラーは、このように不意な(unexpectedly)早死するのか。疑問を抱いたManchester大学のJohn Moriarty氏が調査を開始した。この種の個人情報を含むデータを収集するのは極めて難しい。このため、これまでの研究結果を集約することにした。

 まず、始めに注目したのは、元プロレスラー557人の死亡率(mortality rate)について調査したEastern Michigan大学の分析。その調査によると、年齢45~54歳で死亡した元プロレスラーの死亡率は、同じ年齢層のアメリカ人男性の死亡率に比べて2.9倍も高いのだ。死亡の原因の第一は、心臓血管疾患(cardiovascular disease)という。

 次に、注目したのは、元プロレスラーの死亡率を、元アメリカンフットボール選手の死亡率に比較したBenjamin Morrisの研究だ。
 それによると、2010年の段階で年齢50~55歳の元プロレスラーは、その20%が死亡している。これに対し、同じ年齢層の元アメリカンフットボール選手の死亡率は、ほんの4%に過ぎない。
 
 この違いは、どこから来るのか。
  レスリング・ジャーナリストのErick Cohen氏は、次の2点を指摘する。

 一つは、プロレスラーに、他のプロスポーツ選手のような、オフシーズン(off season)がないこと。週に5~6回もリングに上がり、体を休める期間がない。
 二つ目は、リングの外で繰り広げられる社交に、多忙を極めること。1970年代、1980年代の花形プロレスラーは、まさにロックスター並にもてはやされた。
 さらに、連日のストレスとの戦いの中で、ステロイド(steroids)、麻薬(cocaine)、深酒(drinking heavily)に飲み込まれていったプロレスラーも少なくないという。

 レスラーは、現役時代にスターと喝采を浴びても、一旦、引退すれば、心身ともに疲れ切った、ただの「体の大きな叔父さん」となる。本当のレスリングファンは、その叔父さん達にこそ、もっと声援を送るべきだ。
                   (写真は添付のBBC Newsから引用)

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