その昔、東北の貧しい山村は、悲愴な状況に追い込まれた。空腹で死にそうになっても、食べるものがない、饑饉(famine)、饑餓(starvation)である。
それから、時がたち、時代は変わった。嫌いなものは食べなくてもいい、好きなものは、好きなだけ食べられる、そんな贅沢な暮らしができるようになった。
この時代、何に注意すればいいのか。
食事と健康が密接につながっていることは、すでに百も承知。したがって、口にするものに気を配り、体に良しとするものを、節度を保って摂取する。病気を遠ざけ、余計な薬を飲まずに済むためには、理にかなった食品を探すしか方法は無い。
さて、表題の記事の原題は「調理にはどの油が最適化か」。スーパーの食品コーナーに、調理用油のビンが並んでいる。値段も種類も、まさしく千差万別。どれを選ぶべきか、誰もが迷うに違いない。
そこで、BBCが中心となり、家庭で使用している調理用油(cooking oils)について調査した。調査に協力したのは、イングランド中央部に位置する都市レスター(Leicester)の住民。使い残しの油(leftover oil)を提供してもらい、これをDe Montfort大学の薬学部(Leicester School of Pharmacy)で分析した。
大学の研究室で注目したのは、各種の調理用油の酸化(oxidation)だ。酸化は常温でも緩やかに進む。油が古くなると、臭うようになるのは、このせい。しかし、油を高温(約180℃)で加熱すると、空気中の酸素と反応し、化学物質アルデヒド(aldehyde)と過酸化脂質(lipid peroxides)が生成される。このアルデヒドは、怖い。ごくわずかの量でも摂取すると、心臓疾患(heart disease)およびガン(cancer)の発症リスクが高まる。
分析した調理用油は、ひまわり油(sunflower oil)、植物油(vegetable oil)、コーン油(corn oil)、常温圧縮菜種油(cold pressed rapeseed oil)、オリーブオイル(olive oil; refined & extra virgin)、バター(butter)、ガチョウ油脂(goose fat)の8種。
その中で、最も高い濃度のアルデヒドが生成されたのは、多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acids)が豊富なコーン油とひまわり油。ともに、体に良いと思われがちな品目である。分析を指導したMartin Grootveld 教授も驚く。
"I was surprised as I'd always thought of sunflower oil as being "healthy."
「ひまわり油は体にいいと思っていたので、(分析結果には)驚いた。」
これに対し、一価不飽和脂肪酸(monounsaturated fatty acids)が豊富なバターやガチョウ油脂は、熱しても比較的安定しているため、調理中に、「酸化」が起こることはほとんどない。
しかし、なんと言っても、お勧めの一品は、地中海料理(Mediterranean diet)に欠かせないオリーブオイル。とくに、「extra virgin」にこだわる必要はない。オリーブオイルには一価不飽和脂肪酸が76%も含まれ、心臓疾患の発症リスクを大幅に抑える効果があることは、すでに実証済みだ。
調理用油のラベルに記載された「酸化カット」、「さらさら」等、何となく良さそうな言葉やほとんど意味不明の言葉に惑わされてはいけない。
(写真は添付のBBC Newsから引用)