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魔女の薬草マンドレーク:殺すも生かすも自在 (BBC-Magazine, July 14, 2015)

 

http://ichef.bbci.co.uk/news/800/cpsprodpb/12E3/production/_84253840_deadly-n-alamy.jpg

 魔女(witches)の薬草(herbs)にも色々あるが、その中でも血統書付きの、薬草の中の、それも極めつきの薬草がマンドレーク(mandrake)。何しろ、紀元前5世紀頃に書かれたとされる旧約聖書「創世記」(The Bible in the Book of Genesis [30:14])に妙薬として現われ、紀元前14世紀古代エジプトの王ツタンカーメンの墓の壁画にも出現する薬草だ。

 このマンドレーク。形は朝鮮人参に似て、地中海沿岸(Mediterranean)や中東(Middle East)の乾燥地帯(arid area)に生育する。根が二股に分かれ、まるで小さな人間の足のように見える。昔から言い伝えがある。マンドレークが大地から引き抜かれるとき、恐ろしい叫び声(shrill cry)を上げ、これを聞いた人はその場で、気が狂うか、死んでしまうという。
 
 数千年にわたって、幻覚剤(hallucinogen)、鎮痛剤(painkiller)、媚薬(aphrodisiac)、排卵誘発剤(fertility drug)として使用されて来た魔女の薬草がこれだ。魔女は、マンドレークを原料にして、独自の秘法で妙薬(portions)を作り、これを飲むと、ホーキの柄(broomsticks)にまたがってどこにでも飛んで行けるとされる。


 魔力に溢れたこのマンドレークをシェークスピア(Shakespeare)が見逃すはずがない。「Romeo and Juliet」(第4幕第3場)の一節でジュリエットがつぶやく。

So early waking, What with loathsome smells, And shrieks like mandrakes torn out of the earth, That living mortals, hearing them, run mad.
 
 もしも、(ロメオ様が)目を覚まされるのが早すぎたら、ひどい悪臭と、それに、土から引き抜かれるときのマンドレークの悲鳴、それを耳にしたものは、気狂いになるというわ。

 さらに、作家ローリング(J. K. Rowling)は、その作品「ハリーポッターと秘密の部屋(Harry Potter and the Chamber of the Secrets)」で、マンドレークを小道具に使う。魔法の学校でマンドレークを植え替えるシーンが、それだ。

"The cry of the mandrake is fatal to anyone who hears it," says Hermione, showing off her knowledge to the class. But the students are dealing with young plants which are not so dangerous. Prof Sprout point out that as they are "only seedlings, their cries won't kill you yet... but they will knock you out for several hours".

The pupils cover their ears and harry pulls a mandrake out of its pot, "instead of roots, a small, muddy and extremely ugly baby popped out... He ha pale green mottled skin, and was clearly bawling at the top of his lungs."

「マンドレークの悲鳴を耳にしたものは、この世に生きていられないのよ。」とハーミオン(Hermione)は、自分の知っていることを、クラスのみんなに伝える。しかし、こんなに小さな植物がそれほど危険なものとは誰にも思えず、みんな慎重に作業を進めようとはしない。そこで、スプラウト教授が注意する。「ほんの小さな苗木では、その叫び声で死ぬなんてことはないかも知れない。だけど、数時間は気を失うことになるよ。」

生徒たちは、みな耳当てを付ける。ハリーは、ポットからマンドレーヌを引っこ抜く。なんとその植物には、根がない。代わりに目にしたものは、小さな、それも汚れた、とても醜い人間の赤ん坊。その皮膚は淡緑色で斑点だらけ。そいつが、声を限りに叫んでいた。
 
 このマンドレークは、ナス科(Solanaceae family)植物2,500種(species)の一種。同じナス科の仲間として、トマト、ジャガイモ、ナスビ、トーガラシ、タバコが挙げられ、それに毒草のベラドンナ(deadly nightshade)とヒヨス(henbane)が加わる。つまり南アメリカ原産のナス科は有用な食料であり、ヨーロッパ原産のナス科には毒性成分(poisonous compounds)が含まれる。不思議な因果だ。

 1990年代後半、Harvard School of Public HealthのEdward Giovannucci教授は、トマトに含まれるリコピン(lycopene)の優れた効用を発見する。このリコピンには、フリーラジカルを消す能力があり、男性が1週間に1~2個のトマトを食べると、前立腺ガン(prostate cancer)の発症リスクが減少することを明らかにしたのだ。
 さらにトマトには、血圧、コレステロール値を下げ、脳卒中(strokes)の発症リスクを低減させる効果も認められるという。

 また、赤トーガラシ(red peppers)には、パーキンソン病(Parkinson's Disease)の抑制効果が期待できそうだ。南アメリカ原産のナス科植物には、まだまだ不明な点が多い。これらも確かに、魔法の薬草だ

           (写真は添付のBBC Newsから引用)

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